張 華 (232~ 300)

    張華の字は茂先,范陽の方城の人,(北京市南方の固安)晋代有数の政治家で学者.祖先は無名で
    地方官史で貧しい家の息子として生まれ父親と早く死に別れ羊飼いをして生計を立てていたが,
    その才能を周囲の人に認められ,中央に推挙され以後の出世は目覚しい.低い身分から出世した
    事も有り,大貴族たちの権力争いに中立的な立場をとり,朝廷の内部の腐敗が政治に影響するのを
    苦心して防ぎ,大規模な破局を食い止めた.

    軽薄篇

    末世多軽薄    末の世は 軽薄なるもの多く
    驕代好浮華    驕れる代は浮華を好む
    志意既放逸    志意は既に放逸にて
    貲財亦豊奢    貲財は亦た豊奢なり
    被服極繊麗    被服は繊く麗しきを極め
    肴膳尽柔嘉    肴膳は柔く嘉きを尽くす
    僮僕余梁肉    僮僕は梁肉を余し
    婢妾蹈綾羅    婢妾も綾羅を蹈む
    文軒樹羽蓋    文ある軒に羽の蓋を樹て
    乗馬鳴玉珂    乗れる馬は玉珂を鳴らす
    横簪刻玳瑁    横たえし簪は玳瑁を刻み
    長鞭錯象牙    長き鞭は象牙を錯う
    足下金鑮履    足の下は金の鑮おける履 
    手中双莫邪    手の中は双ふりの莫邪
    賓従煥絡澤    賓従は煥かにして絡澤とつづき
    侍御何芬葩    侍御は何ぞ芬葩しきや
    朝與金張期    朝には金張と期し
    暮宿許史家    暮には許史に家に宿る
    甲第面長街    甲第は長き街に面し
    朱門赫嵯峨    朱き門は赫に嵯峨たり
    蒼梧竹葉清    蒼梧の竹葉は清し
    宜城九醞醡    宜城の九醞醡
    浮醦随觴転    浮べる醦は觴に随いて転り
    素蟻自跳波    素き蟻は自ら波に跳る
    美女與斉趙    美女は斉趙に與れ
    妍唱出西巴    妍き唱は西巴にでず
    一顧傾城国    一たび顧みれば城と国とを傾け
    千金不足多    千金も多しとするに足らず
    北里献奇舞    北里は奇やしき舞を献り
    大陵奏名歌    大陵に名だかき歌を奏す
    新声踰激楚    新しき声は激楚に踰え
    妙技絶陽阿    妙き技は陽阿に絶る
    玄鶴降浮雲    玄き鶴は浮雲に降りる
    鱏魚躍中河    鱏の魚は中河に躍る
    墨翟且停車    墨翟も且た車を停めん
    展季猶咨嗟    展季も猶を咨嗟せん
    淳于前行酒    淳于は前を酒行め
    雍門坐相和    雍門は坐に相い和す
    孟公結重関    孟公は重の関を結し
    賓客不得蹉    賓客は蹉ることを得ず

    三雅来何遅    三雅の来るは何ぞ遅きや
    耳熟眼中花    耳は熟てりて眼の中は花む
    盤按互交錯    盤と按とは互いに交錯し
    座席咸諠譁    座席は咸な諠譁ぐ
    簪珥或堕落    簪と珥とは或は堕落ち
    冠冕皆傾邪    冠冕は皆な傾き邪む
    酣飲終日夜    酣しみ飲みて日と夜と終え
    明灯継朝霞    明るき灯は朝の霞に続く
    絶纓尚不尤    纓を絶つも尚を尤めず
    安能復顧他    安んぞ能く復た他を顧けんや
    留連弥信宿    留連と信宿を弥るも
    此歓難可過    此の歓びを可く過すは難し
    人生若浮寄    人生は浮び寄するが若く
    年時忽蹉絁    年と時は忽ち蹉絁る
    促促朝露期    促促きかな朝露の期
    栄楽遽幾何    栄やかなる楽しみも遽しきこと幾何ぞ
    念此腸中悲    此れを念えば腸の中は悲しくて
    涕下自滂沱    涕の下ること自ら滂沱たり
    但畏執法吏    但だ法を執る吏を畏る
るならば
    礼防且切磋    礼の防を且く切磋せよ
                 
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                   2007/12/11    石 九鼎

       参考文献:
 六朝詩人群像:興膳宏, 大修館
               古詩源(上):漢詩大系 ,集英社
               古詩選: 中国古典選:朝日新聞社