宇田　滄溟 宇田滄溟。名は友猪。字は誠南。滄溟と号す。四国は土佐の人。『滄溟集』がる。 　　　江州途上 匆匆征馬復行舟。　　　　匆匆たる　征馬　また行舟 日落湖光黯欲愁。　　　　日落ちて　湖光　黯に愁えんと欲す 一関桜詞人不見。　　　　一関の桜詞　　人　見えず 飛花髣髴右江州。　　　　飛花　髣髴たり　右江州 　　◆一関桜詞：「さざ波や、志賀も都は荒れにしを、昔なｇらの山桜かな」平忠教が都落ちの時の作。 　　　六月入都有作 辺海風涛夢易驚。　　　　辺海の風涛　夢　驚き易し 側身長嘯若為情。　　　　身を側して　長嘯　若為の情 朱門到処春揺曳。　　　　朱門　到る処　春　揺曳 士女如花唱鹿鳴。　　　　士女　花の如く　鹿鳴を唱う 　　◆士女如花唱鹿鳴：　当時の鹿鳴館での華やかな社交風景を比喩したもの。 　　　赴徳島口占 蛾眉山月憶青蓮。　　　　蛾眉山月　青蓮を憶う 渭水秋風嘆閬仙。　　　　渭水の秋風　閬仙を嘆ぜしむ 願籍一吟双涙筆。　　　　願くは一吟双涙の筆を籍りて 凌滄揺嶽圧前賢。　　　　凌滄　揺嶽　前賢を圧 　　◆青蓮：李白のこと。 　　◆閬仙：賈島のこと。 　　　屋島古 河巖蒼茫起古愁　　　　　河巖　蒼茫　石愁を起す　 漫教行客涙露裘。　　　　漫に行客をして　涙　　裘を露さしむ 沈埋碧血恩讐尽。　　　　碧血を沈埋して恩讐尽きる 紅葉猶描壽永秋。　　　　紅葉　猶を描く　壽永の秋 　　浦　門