中国笑話選>6> 中国笑話選 6 1・李太白 李太白は大変な酒好きだった。そして大の孟子嫌いでもあった。ある士人、酒が飲みたいが金がないので一計を案じ、孟子を罵った詩を数首作って李太白のところへ見せに行った。李太白はその詩を見て大いに喜び、人を引きとめて二人でさかんに孟子の悪口をいいながら酒を飲んだ。 何日か飲みつづけて、ついに酒がなくなってしまうと、その人は帰って行った。その後、李太白がまた酒を手に入れたことを知り、その人がまた尋ねて行ったところ、李太白はその腹を見透かして、言った。 『先日、君と別れてからよくよく考えてみたら、孟子にも、いくらかは、好いところの有るところが解かったよ』 2・暴飲 ひどくけちん坊な男、食事の時には何時も空に指で『鮓』という字を書き、 『鮓!』 と叫んでは飯を一口食べることにしていた。ある時、弟が、 『鮓、鮓、鮓!』 と言ったところ、男はひどく腹をたてて、怒鳴りつけた。 『食いすぎだ!腹をこわして、俺に薬を買わせようという気か!』 3・犬のあくび 耳の遠い人が友人の家へ行ったところ、飼い犬がさかんに吠えたてた。そこで彼は友人に言った。『君のうちの犬は昨夜よく寝なかったようだな』 『どうしてわかる?』 『わたしを見て、さかんに、あくびをしていたからさ』 4・合の字 ある人が魏の武帝(曹操)に一杯の酪乳を贈った。武帝は、 『おお、これはめずらしいものだ』 といい、少しばかり飲んでから。器の蓋に『合』と言う字を書き、 『みんなにまわせ』 といった。一同は何のことかわからず、つぎつぎに器をまわした。順番が楊脩のところに来たとき、楊脩が蓋を取って一口飲むと、武帝はうなずいて、 『さすがに知恵者だ』 といった。 『合』という字を分解すると、『人、一口』となる。各人一口ずつ飲めという意だったのである。 5・せっかち 宴会の招待を受けた「せっかち」な男、早めに来るように、と言はれたことが気にかかり、真夜中に起き出したところ、女房にとめられた。 四更(夜二時)にまた起きようとして、また女房にとめられた。 その後うつらうつら眠って、目が醒めたのは明け方。びっくりして飛び起き、身支度もそこそこに出掛けて行くと、昨夜から引きつずいて飲んでいた客たちが帰るところで、門の外で別れの挨拶をかわしている。男は遠くから見ていてじだんだを踏んでくやしがった。 『馬鹿な女房のおかげで、やっぱり遅れてしまった。宴会はもうすんでしまったんだ』 6・薄い酒 ある人が夜中に酒屋に酒を買いに行った。 戸を何度も、叩いても開けてくれずに、 部屋の奥から『戸の隙間から銭を入れてください』 と言う。 『酒はどこから出すんだ』 ときくと。 『やっぱり戸の隙間から出します』 『そんな、ばかな』 と笑うと、 『笑いごとじゃありません。うちの酒は薄いんです』 7・お嬢ちゃん 神仙の道に憧れている夫婦がいた。かねがね六十になったら山に入って修行しようと話しあっていたが、よいよその時が来たので、二人は道教の本山の終南山へ行った。 『わしが先ず様子を見てくるから、おまえは麓で待っていなさい』 じいさんは、ばあさんにそう言って、一人で山に登って行ったが、頂上まで行くと、本山にいるのは何千何百歳という仙人ばかりで、じいさんに、 『坊やはどこから来たのだい』 と聞いた。じいさんは慌てて山を下りて行き、待っていたばあさんに『早く帰ろう』 『せっかく来たのに、どうして帰るのですか?』 ばあさんがいぶかると、じいさんの言うには、 『わしはこの年になるのに、坊やと呼ばれた。お前が行って、もし、お嬢ちゃん、と呼ばれたら・・・・・・・帰ろ。』 8・太鼓橋 太鼓橋の上に、頭を下に足を上にして寝ている男がいるので、 『さかさまじゃないか』 と言うと、 『頭を上にすると立っているのと同じで、寝ることに、ならんから』 9・ばか 兄が弟をつれて人を訪問した。席につくと、西域の「乾し葡萄」がお茶請けに出された。弟が兄に、『これは何というものなの』 と聞く、兄は、 『ばか』 と言って、弟を制した。「乾し葡萄」のあと、「橄欖」が、やはりお茶請けに出された。弟がまた兄に、『これ、何というものなの』 と聞いた、兄がまた制して、 『ばか』 弟は怪訝な顔をした。帰り道で弟が言った。 『兄さん、さっき食べたばかのうち、始めのばかは甘酸っぱくて旨かったけど、二番目のばかは、渋くて、まずかったねえ』 10・曲取り 貧乏な夫婦がいた。三度の飯も食えず、空腹をかかえたまま寝たが、女房がしきりに嘆くので亭主『まあ、そう嘆くな。今夜はひとつ、三度つづけて曲取りをして三度の飯の変りにしようじゃないか』女房は承知して、そして疲れて眠った。 さて翌朝起きようとすると、目はかすみ、頭はふらつき、足もともおぼつかない。 亭主は、よろよろと立ち上がりながら女房に言った。 『こいつは豪勢だ。飯の代わりどころか、酒の代わりにもなる!』 11・小便無用 舟と舟がすれちがう時、外へ手を出していたために指をはさまれて怪我をした男が、帰ってそのことを、話すと、女房びっくりして、 『これからは、舟と舟がすれちがう時には決して小便だけは、しないようにしてね!。』 [ 目次 ] Copyright(C)1999-2004 by tohou AllRightsReserved 石九鼎の漢詩舘 thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/warai6.htm リンクは自由です。無断で複製・転載することを禁じます |