笑話選>7>           中国笑話選 7

1・孝行の手本

ある男、継母につかえて孝行をつくそうと思い、ある学者に訊ねた。
『古人で継母につかえて最も孝行をつくした人は誰でしょうか』
『それは閔子騫(びんしけん)だ彼は冬、蒲の穂を着て、綿衣は継母の子に譲ったと言うからだ。』そこでこの男は蒲の穂を着ることにした。そしてまた、たずねた。

『ほかには誰が孝行だったでしょうか』
『王祥だ。彼は継母が冬、魚を食べたいと言ったところ、氷の上に寝て穴をあけ、魚を取ったのだ』『その孝行は、わたしには、出来そうにもありません』
『どうしてだ』
『王祥の着物はおそらく、わたしのよりも厚かったでしょうから』

2・老後
平原の唐丘氏が渤海の墨臺氏の娘を娶った。娘は眉目うるわしく才たけていた。夫婦仲むつまじかった。その後、男の子が生まれたので、妻は夫と一緒に子供を見せに里帰りをした。

夫婦は暫らくぶりで妻の老母の丁氏に会ったが、夫は家に帰ると妻に、
『お前を離縁する』 と言ってきかない。妻は家を出る時、
『私のどこが、お気に入らないのでしょうか』 とたずねた。すると夫の言うには、
『お前の母に会ったら、すっかり老いぼれていて以前の面影がなかった。お前もきっと、あんなふうになると思うので、それで離縁するのだ。ほかに気に入らないことは何もない』

3・やめられない
ある女房、陣痛がひどいので亭主に向って、
『わたし、もう二度とあのことはしないから、あなたもこれからは絶対に私の傍に寄らないで頂戴。子供なんか一生、なくてもいいわ』 と言う。
『よしよし、わかった』
やがて、無事に女の子が生まれ、夫婦であれこれと名前を考えあっていると、女房がそっと言った『ねえ、招弟(しょうてい)「弟を招く」と言う名にしましょうよ』

4・居留守
金を借りている男、借金取りが来るたびに居留守を使って逃れている。ある日、借金取りが行くといつものように、家の中から、
『留守だよ』 本人の声がした。
『現にいるくせに、なぜ居留守を使うんだ』
『わしは親戚の者で、留守番に来ているのですよ』
そこで借金取りが、窓紙を濡らして穴をあけて、中をのぞいて見ると、男は大いに腹をたてて、

『わずかな借金のために窓を壊されるとは心外だ。ちゃんと修理しないことには、借金は払わん』借金取りは仕方なく、紙を買って来て張り替え、
『さて、払ってもらおうか』 中から、
『やっぱり留守だよ』  という本人の声。

5・酒好き
酒好きの男、あまりに長くなるので、その下男が連れて帰ろうと思った、空が曇っているのを見て『雨が降りそうですから・・・・・・』 すると、酒好きの男が言う。
『降りそうなら、帰れないじゃないか』 という。暫らくすると降りだした、降りつずいてから止んだ。

『雨が止みましたから・・・・』
『止んだら何も心配すること、なじゃなか』

6・値段
ある人が下男に、楓橋へ行って麦の値段を調べてくるようにいいつけた。下男が楓橋へ着いた。
『うどんをどうぞ』
と呼んでいる者がいたので、ただだろうと、思って二杯食べ、そのまま立ち去ろうとしたら、
『もしもし御代を』
『金は持っておらんよ』 いきなり頬を六つ打たれた。
下男は急いで家に帰って、主人にいった。
『麦の値段は解かりませんでしたが、うどんの値段がわかりました』
『いくらだった』
『一杯がビンタ三つでした』

7・虎の皮
ある親父が虎に襲われた。虎は親父を口にくわえて逃げようとする。息子が弓矢を持って追いかけ、狙いを定めて弓を引き絞ると、遠くの虎の口から親父が叫んだ。
『せがれや、足を狙って射るんだぞ、皮に傷をつけると値が下がるからな』

8・遺言
食う物も食わずに金を貯め込んだ男、病気が重くなって死にそうになった時、女房に遺言した。
『わしは一生ケチを通して、親類の付き合いもせずに金を貯めたが、死んでもまだ金が貯めたい。
わしが死んだら、皮を剥いで皮屋へ売り、肉を切って肉屋へ売り、骨を切って漆屋へ売ってくれ。

きっと、たのんだぞ』
息が絶えてから半日すると、また息をふき返したが、女房を見るなり、言いふくめた。
『人はあてにならんから、皮も肉も骨も、掛売りにせずに必ず現金で売るのだぞ』

9・精をつける
蝦を食べると精がつくといはれている。ある母親、息子が蝦に箸をつけようとすると、慌ててとめて

『それは、お父さんに取っておきなさい』 というと、息子が、
『どうして? お父さんは蝦が好きなの?』 と聞く
『それほど好きじゃないけど・・・・・・・。お前も嫁をもらえば、解かるようになるよ』

10・嫁盗み
花嫁の家は金持ちで、花婿の家は貧乏だった。婿の家では嫁の家が婚約をたがえることを惧れ吉日を撰んで婿をつれて嫁盗みに行った。ところが、あまり慌てたために、間違えて、嫁の妹を盗み出した。嫁の家の人たちもあわてて、
『ちがいます。ちがいます』
と叫びながら追いかけて来る。すると、婿に背負われている嫁の妹が言った。

『いいのよ、いいのよ。かまわずにどんどん走ってちょうだい』

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