笑話選>8> 中国笑話選 8 1・大学の道 「大学」の開巻第一句は、 『大学の道は、明徳を明らかにするに在り』(大学之道、在明明徳)である。素読の先生、弟子に『「大学の道」とはどういう意味ですか』 と訊ねられ、急に酒に酔ったふりして、 『おまえたちは意地が悪い。よりによって、わしが酔っている時に質問をする』 家に帰り妻にそのことを話すと、妻は、 『「大学と」言うのは書物の名で、『之道』と言うのはその書物の中に書かれている道理ということですよ』 先生は「なるほどそうか」と思い、翌日、弟子たちに向かって言った。 『おまえたちは意地がわるい。きのうわしが酔っていたときには質問したくせに、今日は、いっこうに質問しないのは、どういうわけじゃ、昨日質問したのは何だったかな』 『「大学の道」ということでした』 『ウン。そうだったな』 先生はそういって、妻に教えられたとうりに説明した。そこで弟子たちはまた、質問した。 『「明徳を明らかにするに在り」とは、どういう意味ですか』 先生はまた急に額をこすりはじめて、 『ちょっと待て。わしはまた酒に酔うたようじゃ』 2・肉と汁 大のけちん坊で、しかもすぐ怒り、また、すぐ喜ぶ男がいた、あるとき、はんの僅か肉を買ってきて、女房に吸い物をこしらえさせた。 碗に脂が浮いているだけなのを見て、カッとなり、叫んだ。『おれとおまえは前世からの仇同士だ!さっさと出て行け!』 と怒鳴りつけた。ところが箸で碗をかき回すと肉が少し見えてきた。忽ちにこにこしながら女房の肩を撫でながら、 『おれとおまえは五百年も前から定められていた夫婦」だよ』 といって、うまそうに汁をすすった。 3・孔子の教え 論語に孔子の飲食について記した一章がある。 『食は精げたるを厭わず、膾は細きを厭わず』 (飯は白米がよい。膾は細く切ったのがよい) ある道学先生人々に言った。 『孔子の言葉を一、二句でも体得すれば、尽きざる利益を得るものである』 すると一人の若者が進み出て、一礼して言った。 『私は孔子の言葉を二句、深く体得しております。そのため心は豊かになり、体もふとりました』『その二句と言うのは?』 『はい。食は精げたるを厭わず、膾は細きを厭わず、という二句でございます』 4・川の中 ある親父、川に落ちて溺れかかった。息子が大声で助けを呼ぶと、親父はアップアップしながら『銀三分でなら助けてもらうが、それ以上なら絶対に助けてくれるな』 5・袋 ある男、金を持って市場へ米を買いに行ったが、人ごみの中で金を落としてしまい、すごすごと帰って来た。そして妻に言った。 『今日は市場がひどく込んでいてね、袋を落とした人もずいぶんいたようだ』 『まさか、あなたも落としたのではないでしょうね』 『あの込みようでは、天下の豪傑だってどうしようもないよ』 『やっぱり、落としたのね。それでお金の方は?』 『それは大丈夫だよ。袋の口をしっかりと縛っておいたから』 6・川の字 ある先生、ただ川の字しか知らない。弟子から来ている手紙をめくって、その中から川の字を取り出して人に教えてやろうと思ったが、なかなか見つからない。やっと三の字を見つけて、この字を指さしながら、罵った。 『さんざん探しても見つからんと思ったら、この野郎、こんなところに寝ころんでやがった』 7・熱病 子供が熱病にかかったので、薬をもらい飲ませたところが死んでしまった。父親、怒って医者に怒鳴りこむと、医者、話しを信用せず、自分で行って診ると言う。医者、その家に行き、子供の死体に触っていたが、おもむろに父親に向って、 『ふざけちゃあいかんですな。熱は下がっとりやす』 8・坐禅の効用 有る人、修業に好いからと座禅をすすめられて、足を組んで坐っていたが、 突然飛び上がって『なるほど効用のあるもんだ』 『もう、わかりましたか』 『十年前に人に肥料の代金を貸したままだったのが、いま急に思い出せた』 9・年とったやもめ 蘇州の年とったやもめ、人に御子息がありますかと言われ、 『子供のことを聞かれると泣けて来ます。実は以前、妻の祖父が父のために嫁をもらってやろうとしたもですが、悪い奴に邪魔をされ、 もう一寸というところで話しがこわれました。そこで妻の母を娶ることが出来ず妻の母に子供が出来ずじまいでしたので、今もって子供のコの字すらない有様で。』 10・人造り 玉帝がお忍びで下界にくだり、夫婦がいとなんでいるのを見て、土地の神を呼び出し、 『あれは何をしているのだ』 と聞く。土地の神、 『人を造っております』 『一年に何人造るのか』 『一人でございます』 『そんなことなら、ああまでせわしなく動くこともあるまいに』 11・三男 婚礼のとき、新郎新婦が並んで新郎の両親に拝礼する儀式を『拝堂』と言う。 さて新婦がその拝堂の儀式を済ませたとたん、にわかに産気づいて男の子を生んだ。姑は世間体を恥じて、あわてて人目につかぬようにして隠して世話をした。すると新婦が姑に言った。 『おかあさまがこんなによくしてくださることがわかっていたら、家に置いてきた長男と次男もいっしょにつれてくるのでしたわ』 [ 目次 ] Copyright(C)1999-2004 by tohou AllRightsReserved 石九鼎の漢詩舘 thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/warai8.htm リンクは自由です。無断で複製・転載することを禁じます |