Recent paper 4

Gastroenterol Endosc 43:58-63, 2001


A NOVEL AND INNOVATIVE TECHNIQUE OF STENTING FOR THE PATIENTS WITH INOPERABLE PYLORIC OR ANTRAL MALIGNANT STENOSIS: GASTROSTOMY AS A STENT INDUCING ACCESS

Hironori TOKUMO, Hironao KOMATSU, Madoka NAKAO,
Kayoko KUNIHIRO, and Kunio ISHIDA
Department of Gastroenterology, Hiroshima General Hospital

The self-expandable metal stent (EMS) for a malignant pyloric or antral stenosis may be considered as one of the best treatments for keeping the patientsユ quality of life (QOL). However, the stenting is technically difficult, because the elongation of the gastric greater curvature disturbs to lead the stent to the collect position. In this paper, we introduce a novel and innovative technique in which gastrostomy is utilized as an access point to induce the EMS to the pylorus or the antrum. 12 patients with the inoperable malignant pyloric or antral stenosis were subjected to this study. In initial 4 cases, Z stent or Wallstent, which are designed for the esophageal stenosis, was selected instead, and induced orally. However, the procedure was technically difficult by the reason mentioned above. In the remaining 8 cases, the gastrostomy was utilized as an inducing route. Concretely, after suturing the abdominal wall and the gastric wall at the opposite position to the stenosis, a puncture with a needle followed. A guide-wire passed inside the needle was induced to the pyloric or the antral stenosis by the manual operation and then it was passed though the stenosis. After the dilation of the gastrostomy, a covered Z stent was induced to the position of the stenosis over the placed guide-wire and then it was released. In all cases, the EMS was successfully positioned and the stenosis was relieved. Mean survival time after stenting was 2.5 months. Conclusively, the EMS for the patients with inoperable pyloric or antral stenosis contributes to improve their QOL. To induce the EMS to such patients, the gastrostomic access technique would be the most useful and logical route.

幽門前庭部悪性狭窄に対する経胃瘻ステント留置術の経験

徳毛宏則,小松弘尚,中尾 円,國弘佳代子,石田邦夫

広島総合病院 消化器内科,

住所:
〒738-8503 
広島県廿日市市地御前1-3-3
広島総合病院 消化器内科
徳毛宏則


要旨

われわれは幽門前庭部の悪性狭窄に対するステント留置に胃瘻ルートを用いる方法(経胃瘻ステント留置術)を試み良好な成績を得た.気管支用Zステントにカバーを巻き使用した.内視鏡観察下に病変から正面となる部位を穿刺点とし,胃壁と腹壁を固定後,同部に8Fアンギオシースを挿入した.アンギオシース先端をを用手的に操作し悪性狭窄部へ誘導,そこからガイドワイヤーを狭窄を越え十二指腸まで通過させた.そのガイドワイヤーにそわせてステントインデューサーを通しステントをリリースした.本法は安全かつ容易な方法であると考えられた.


氈@緒言
手術不能の上部消化管悪性狭窄に対するself-expandable metal stent (EMS)の有用性が報告され,広く臨床応用されている.そのほとんどは食道癌に対する内視鏡的留置である1,2,3).幽門前庭部の悪性狭窄に対しても,同様のステント留置が試みられているが,実際には留置困難例が多い.その理由は,同部位の病変に適したEMSが未だ開発されていないこと,またインデューサーの長さや硬度に問題があること,留置に際して胃大彎へのたわみが大きく目的部位へステントを正しく誘導しにくいことなどがあげられる.一方,当科では,閉塞性黄疸患者の外瘻胆汁を胃瘻ルートより腸管内再環流行う方法(external biliary jejunal drainage with gastrostomy feeding: EBJD-GF)の報告4)に加え,胃粘膜病変に対する粘膜切除術(endoscopic mucosal resection: EMR)における治療困難部位に対し胃瘻ルートより硬性把持鉗子を挿入し内視鏡との協調操作でEMRを施行する方法(trans-gastrostomal EMR: TG-EMR)の開発など,胃内病変に対する新たなアクセスルートとしての胃瘻の可能性を示唆してきた5).今回,われわれはステント留置困難な幽門前庭部へのステント留置に胃瘻ルートを用いる方法(経胃瘻ステント留置術)を試み良好な成績をおさめたので報告する.
 対象
1997年以来当科で経験した手術不能な前庭幽門部悪性狭窄を対象とした.なお,多量の腹水がある症例や病変の広がりが胃瘻穿刺部までおよぶ症例などで,胃瘻形成自体が困難な症例は経胃瘻ステント留置術の適応から除外した.本人および家族に胃瘻形成やステント留置に関して十分なインフォームドコンセントを得た後,12例に14回のEMS留置を試みた.初期4例(4回)には経口的に,後期8例(10回)には以下の経胃瘻ステント留置術で留置した.
。 方法
1)カバー付きEMSの製作.
初期の4症例では食道ステント(Zステント 直径20〜30mm 長さ50mm:2例,Wallstent 直径22mm 長さ70mm:2例)を流用し経口的に留置を試みた.このステントでは次の問題点が指摘された.幽門前庭部の狭窄に対するステントしては,食道ステントのような長さは不必要であるが拡張力はさらに強いものが望ましい.これを解決する方法として以下の自作ステントを作成した.まず,拡張力が強く長さが短いステントとして気管支用Zステント(直径3.0cm, 長さ2.5cmが二連結されたもの)を使用しバイオブレン膜を外周に縫合固定したカバー付きEMSを自作した.製作後,再度縮めてインデューサーに装填した(図1).
2)留置法(経胃瘻ステント留置術).
まず内視鏡観察下に病変からなるべく正面となる胃体下部前壁〜胃角部対側前壁に穿刺点を決め(図2),まずクリエイトメディック社製胃壁固定具で胃壁と腹壁を2カ所固定した(図3).固定部をエラスター針にて穿刺し残した外套内へガイドワイヤーを挿入,ガイドワイヤーに沿わせてテルモ社製8Fアンギオシースを挿入した.X線透視と内視鏡画像モニター下にアンギオシース先端をを用手的に操作し悪性狭窄部へ誘導,内視鏡の補助下にガイドワイヤーを狭窄を越え十二指腸まで通過させた(図4).十二指腸に到達しているガイドワイヤーに沿わせて,胃瘻部を徐々に拡張し(図5),最終的にステントインデューサーを通した.ステントリリースの位置をX線透視下に確認しステントを留置した(図6,7).終了後の胃瘻部にはカテーテルを留置した.なお,内視鏡挿入からステント留置完了までの時間を記録した.
「 結果
上記の経胃瘻ステント留置術を8例に施行し,全例で留置に成功した.うち1例では計3回の経胃瘻ステント留置をした.この症例では当初カバーのないZステントを留置したため腫瘍のステント内発育をきたし再狭窄を呈した.そこで,留置後保持した胃瘻からステントを再挿入した.このような経験から最近の症例では全てカバー付きEMSを使用している.ステント挿入に要した時間は,経胃瘻で挿入するようになって経口的に挿入していた初期例に比べ,明らかに短縮していた(mean±sd:経口的63.8±11.1分,経胃瘻39.5±8.6分).経胃瘻ステント留置術では胃瘻作成という過程が加わるがその後の操作が容易となり,症例を重ねることで手技自体はさらに安定していった.経胃瘻ステント留置術では胃瘻造設やステントの留置手技自体からくる早期合併症は認められなかった.初期の1例において,Wallstentの逸脱例を認めた.経口的ステント留置した4例を含めた全12例の留置後平均生存日数は2.5±1.7ヶ月であった.
」 考按
手術不能の悪性食道狭窄でステント治療の有用性は広く認められている.胃癌,特に幽門前庭部の狭窄についてもステント治療の有用性が報告されている6,7).しかしながら,幽門前庭部の狭窄に適したステントが無いことに加え確実な留置方法が確立されていないことがこの部位のステント留置を困難にしている.今回の我々の方法は,幽門前庭部の狭窄に適したEMSを開発することと,同部へのステント留置において容易でかつ確実な方法を開発するという2点からなっている.
幽門前庭部の悪性狭窄では,狭窄の程度は様々であるが,その長さは短くおおむね5cm以下である.さらに,狭窄の肛門側には壁の薄い十二指腸球部がありその先は直角に曲がり下行脚へつながっている.この解剖学的事実は,幽門前庭部のステントは肛門側へ長く余して留置できないこと,またステントの端は腸管粘膜を傷つけやすい鋭利なものであってはならないことを意味している.ステントの拡張力はかなり強いものが望ましく,以上の点から現在入手可能なEMSのうち,気管支用Zステント(直径3.0cm,長さ2.5cmが二連結されたもの)を選択した.このZステントは目が粗く腫瘍のステント内発育をきたしやすいので,バイオブレン膜をZステントに巻いて縫合しカバー付きEMSを自作使用した.この自作カバー付きEMSは長さ,拡張力とも適当で,逸脱や穿孔などの合併症もなく有用であった,この自作カバー付きEMSを使用した最近の症例全てで,腫瘍のステント内発育による再狭窄をきたすことはなく,この点でも非常に有用であった.
ステントの留置法についての報告をmedlineにて検索したところ,ほとんどが経口的留置法であったが6,7,8),胃瘻からの留置例は1例のみであった9).われわれも当初,食道EMSに準じて経口的にアプローチしたが,大彎に沿ってカーブしほぼ180度まわって幽門前庭部に至るため,非常に操作性が悪く,狭窄部への到達が困難であった.腹壁からの用手圧迫や,内視鏡的アシスト(把持鉗子などで補助する)を併用しても,実際の手技は困難を極めた.そこで経胃瘻ステント留置を考案,施行した.この方法のメリットは,胃角部対側あたりに穿刺点を定めると幽門前庭部の狭窄部からほぼ正面となり,その後の操作が格段に容易となることである.まずガイドワイヤーの通過もX線透視と内視鏡画像モニター下にアンギオシースの用手的操作で容易に狭窄を通過できた.またステントのインデューサーもほぼ直線的に挿入されることから,ステントのリリース位置の調節が正確に行えることなど,経口的挿入法に比べ格段と操作性が改善した.実際に処置に要した時間も胃瘻造設というステップが加わったにもかかわらず短縮していた.
唯一注意すべき点としては,胃瘻造設に伴う出血等の危険性を考慮する必要があることである.しかしながら,現在では内視鏡的胃瘻造設術(percutaneous endoscopic gastrostomy: PEG)が一般に広く認知されつつあることを考えると,デメリットと言えるほどの問題点とも思われない.逆に,本法施行後に胃瘻を保持しておくことで,以下のようなメリットも生じた.まず,腫瘍の発育で再狭窄を生じた場合に,この胃瘻部からステントを再度挿入できたことである.この際も短時間で処置し狭窄を解除することができた.また別の症例では,経口摂取も不能なターミナルステージとなったが,ただちに胃瘻を解放することで胃の減圧を得ることができ,患者さんの苦痛を除去しquality of life(QOL)の向上に貢献できた.
、 結論
われわれは,胃瘻を胃内病変に対する新たなアクセスとして応用してきた.今回開発した,カバー付きEMSを胃瘻から留置する方法(経胃瘻ステント留置術)は,手術不能の幽門前庭部悪性狭窄症例のQOL向上に貢献できるステント留置の方法として高い有用性があると考えられた.

文献
1)Cwikiel W, Stridbeck H, Tranberg K-G et al. Malignant esophageal strictures: Treatment with a self-expanding nitinol stent. Radiology 1993; 187: 661-5.
2)Vermeijden JR, Bartelsman JFWM, Fockens P et al. Self-expanding metal stents for palliation of esophageal malignancies. Gastrointest Endosc 1995; 41: 58-63.
3)大川信彦,藤田力也.食道狭窄の内視鏡に関する欧米の動向.消化器内視鏡 1991; 3: 1563-8.
4)Tokumo H, Ishida K, Komatsu H et al. External biliary jejunal drainage through a percutaneous endoscopic gastrostomy for tube-fed patients with obstructive jaundice. J Clin Gastroenterol 1997; 24: 103-5.
5)徳毛宏則,小松弘尚,石田邦夫ほか.胃粘膜腫瘍性病変に対する胃瘻下内視鏡的粘膜切除術(TG-EMR)の有用性の検討.Gastroenterol Endosc 1997; 39: 1775-80.
6)Venu RP, Pastika BJ, Kini M et al. Self-expzndable metal stents for maliganant gastric outlet obstruction: a modified technique. Endoscopy 1998; 30: 553-8.
7)Binkert CA, Jost R, Steiner A et al. Benign and malignant stenoses of the stomach and duodenum: treatment with self-expanding metallic endoprostheses. Radiology 1996; 199: 335-8.
8)Pinto IT. Malignant gastric and duodenal stenosis: palliation by peroral implantation of a self-expanding metallic stent. Cardiovasc Intervent Radiol 1997; 20: 431-4.
9)DユAltorio RA, Kvamme P. Palliation of obstructing gastric carcinoma with metal stents through a gastrostomy. Am J Gastroenterol 1998; 93: 991-3.


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