『パチプロ日記』の作者田山氏のパチンコ日記に『論語』の記述がある。田山氏は「而して」とか「如し」、「然るに」など漢文に良く見られる言葉を使っていた。俺も氏に倣ったわけじゃないが、彼の影響で『論語』などを読み始めた。パチンコ無職と『論語』は最も異色の取り合わせのように思えるだろう。だが、パチンコ無職だからこそ必要だ。無軌道な生活だからこそ「自分を律しなければならない」のである。人間は一人で生きることは出来ない。そしてどの社会にもルールがある。玉の横流し、台を何台も押さえる、ハイエナ、ルールを破れば簡単に稼ぐことが出来る。しかし、パチンコ無職が自分を律することが出来ない時、それは人として最低限の物さえも失う瞬間だ。普通の生活が出来ず、社会に貢献できない。それを自認するからこそ自分を律して人様の迷惑にならないように生きる。金にはきれいでいたい。田山氏はそう考えたのではないだろうか。
俺もそう考えていた。だが現実は難しい。ガツガツするのは見苦しいと口では唱えながら、甘い台があると夜遅くまで粘っていた。その心は次の日まで甘い釘が残っている保障がないからである。パチンコ無職たるもの、その日の台にありつければ上等である。ガツガツ稼いでどうする。金に拘束されてどうする。そう思いながらも実際は粘っていた。結果俺は多くの台を潰してきたのだろう。パチンコは結局客同士の金のやり取りだ。一人の客が勝ち金を独占すれば先は見えている。負け続ける客は離れていく。店は慈善事業ではない。台は閉められる。ますます客は離れる。さらに台は閉められる。やがてジエンドだ。そして良い台を求めて移動する。その繰り返しだ。その結果パチンコ台に拘束されることとなった。パチンコを打つのが義務となったのだ。勝負を楽しむパチンコ、遊戯を楽しむパチンコが、義務のパチンコへと変化したのである。お笑いだろう。何で仕事もせずにパチンコを打つことが義務なのか。止めればすむ話だ。店も一般の客も喜ぶだろう。だが、パチンコを打つことは惰性から習慣へと変化していた。恐ろしいことである。ぬるま湯から出られなくなったのだ。こうして俺は義務のパチンコ無職生活を名実と共に歩み始めたのである。
今俺はパチンコ無職ではない。パチンコファンだ。だからこそ足るを知ること。勝ち金を一定以上得ない。それをルールとしている。とりわけ数少ない貴重な羽根物を潰さないためにも楽しみながら打っていきたい。そのルールを破った時、再びパチンコ無職の生活に逆戻りすると自戒している。
今日もCRポチッと一発おだてブタ。本当にこの台を打てるのは楽しみ。るんるん気分で入店。さて、先客は1番には先生で下に3箱、2番は最近見るちょび髭君。7番に田山さんで手元に1箱、おっ、9番にはお久しぶり、ベレーさん。1箱積んでいる。空台は3番、4番、6番、8番、10番。10番はパス。分かる範囲で釘を見たところ最右翼は3番だが、これは一番のデキ悪。最近はましになっているとはいえ俺にとってはアンタッチャブルの台だ。次は8番だろうが、このところ三連勝、それも目立つほどだったからできれば打ちたくない。その上デキが下降線と言うのも気になる。にしても看板台だった4番、6番が空台なのは寂しいものだ。だが、4番はチャッカー上の風車が若干左に叩かれて開き。希望的観測で4番。
打ち始めるとまあまあの感触。悪くないが鳴きが若干足りないか。他に候補台があるからケチをつける。さて最初の当りは3kの左15発SPルート3発目。投資は出来るだけ少ない方が良いから、3分の1で当るSPルートは本当にアツイ。ジリジリと焦らされしばらく回ってXにスポッと来た瞬間はやはり堪らない。当りが目に見えるからアツさ倍増。だから羽根物はやめられないのだ。一回目は8R。まずまずだ。この出玉で様子を見ようと思ったら続いて2チャッカーに入って、二回目で拾った玉がXに来て、16R。一息つける瞬間。三回目、約800発使った右3左23発目でXに来て、3R。持ち玉は300発位だが、鳴きも寄りもまずまず、デキも良いから一安心。続いて左1発目で3R。やはりデキが良い台は強い。その後も当りが続く。右1左3で16R。右2左5で16R。早くも2500発を超えた。
一息ついたところで周りを見回すと、1番の先生は変わらず下に3箱、2番のチョビ君は下に1箱。ところでチョビ君は止め打ちをしていないから打ち込んだ人とも思えないけど、2番や5番などデキがあまりよくない台でよく出している。腕が良いのであろうか。隣の5番は数人代わって出玉は0。6番も苦戦。7番の田山さんも一箱を行ったり来たり。8番も目立たず。9番のベレーさんは下に2箱になっている。ところでベレーさんが9番を打つのは珍しいが、好きな4番、6番を打った後に移動したのだろうか。両台とも嵌った形跡があるが。
次は右3左29発目と少し掛かって8R。その後左6の3R、右1左4発目の16R後の左5の16Rで漸く下に1箱下ろす。約3500発。鳴き寄りデキと三拍子揃って、さすが名機だ。今日は何時まで打とうかな、何発でやめようかなと良からぬことまで考える余裕。だが、好事魔多しは正論だ。3Rの2連荘までは好調だったが、急に鳴きが衰える。次は16Rだったが、23発拾わせるのに約1500発掛かった。さらに悪化してその出玉で拾った玉は何と10発、唖然とするほど。拾い悪とはいえ、鳴きが悪すぎる。移動を考えるが移る場所がない。止めるか飲まれるか、勝負を考えれば止めだろうが、だらだらと続行する。相変わらず度し難いが、鳴きはムラがあるもの、復活を夢見て続行する。鳴きの悪さは変わらず左14SPルート2発目が何とかXに決まるが、3R。諦めた頃鳴きが徐々に改善する。だが、今度はXに来ない。惜しいところでXをそらす。玉がオダテやXの前後ばかりポトリと落ちる。頼みの綱のSPルートも外れ、4発目が外れた時、とうとう出玉は消えてしまう。止めても良いが、鳴きが復活したのである内はと500円追加投資。右4左36発目がやっとXに決まる。だが、3R。当然飲まれると思ったらここから驚異の粘り。次は左の3で3R。さらに驚くべきは次に鳴き捲くり拾い捲くりで、たった150発程度の玉で左9SPルート2発目、計11発も拾ってX。こんな時は当然16Rで出来た。と叫びたいとこだが、3R。だが、波は続く、左3SPルート1発目で8R。さらに左1発目でXに来るから今度こそ、デキた。と行きたい所だが3R。次計13発で8Rが来たが、次は11発目がXを掠めて外れで了。負けたが今日の釘は何とか勝負になっただろう。それにしても800発の玉で10個しか拾わなかった台がその数十分後に、150発で11発拾うのだから恐ろしい。これ程の落差は初めてだが、結構鳴きムラ拾いムラは付き物。だから羽物は難しく何よりも面白い。止められない所以だ。しかし、その分羽物の負けは悔しくもある。
1番の先生は30分前に3箱持って帰った。2番は下に3箱、この台がこんなに出ているのを見るのは久しぶりだ。6番は駄目。7番は田山さんが相変わらず1箱を行ったり来たり。8番は1箱で食いついたところか。9番のベレーさんは3箱持って帰り、常連のおばちゃんが今1箱。10番は2箱程度。
16R・8R・3Rの比率 7・4・10 SPルート28発中6当・左229発中15当
使った玉875発 出玉0
そろそろ入梅だろうか。雨の日は憂鬱なものだ。バイクしか持たない者にとっては。濡れた路面は危険極まりない。雨具の心配をしないといけない。濡れた合羽を干さないといけない。気儘な生活をしている罰だろうか、そんな些細なことが煩わしい。だが、雨自体嫌いでない。生来の日陰者気質ゆえだろうか。むしろ雨の日は好きである。とりわけ陋屋にもれてくる雨音は何とも優しく好きである。パチンコ無職の日々、しばしば雨の日は休みにした。朝二度寝をした後布団に篭って雨音を子守唄。降り注ぐ雨を想いながらの読書。それに飽きたら再びうたた寝。それが最高の贅沢だった。しとしと降り続ける雨音は心の喧騒を濯いでくれた。雨の日の気儘な休日。それはパチンコ無職に許される唯一の特権と言えたかもしれない。
さて、先客は1番に田山さん、4番、6番、7番に知らない若い人、10番には珍しく朝から蔵之介さん。彼は佐々木蔵之介に似ている主に6時過ぎに現れる勤め人、なかなか綺麗な打ち方で好感が持てるが残念ながら成績は芳しくない様子。出る台をがめつく打つようにガツガツしないと素人さんには厳しいのだろう。出玉は1番、4番に手元一箱で他はちょぼちょぼでさえない。ついでに言えば予想通り週末は出ていないようだ。釘を見たところ、相変わらず覚束ないが、全て代わり映えしない。8番と9番で迷うが、8番は数週間前に自分が出した後、チャッカーを閉められたまま、釘は9番がまし。だが、9番は開きを見つけられなかったし役も気になる。それ故8番から。
1kの左3にSPルートに1発来たのがじりじり回りX+16Rで幸先よい。1kで台の様子見が出来るのは気分的に楽。やはり鳴きが足りない。次は右1・左10発目がXで8R。計11発に650発使った。だが、役デキは良い。次は左10のSPルート1発目がXに来てこれは3R。だが、使った玉は約200発。続いて左3発で3Rだったが、次に5発拾わせるのに400発使った。鳴きも覚束ないが、何よりも拾わない。今の時点で5鳴きに1発しか拾わない。普段半分弱の割合で拾うからかなり酷い。7番が空いたので釘を見て移動。だが、完全に失敗。他に開き台がないからと甘い考えで行くが酷い酷い。500発+500円で左2発右1発の3R一回だけ当り。こっそりと素知らぬ振りで元の8番へ。辺りを見回すと予想通り6番も苦戦。蔵之介さんは10番、9番と来て諦めて帰った。500円追加の左計6発目で8R。この出玉で粘るも計20発拾わせて飲まれる。さらに追加500円、総計2.5kの左18・SPルート3発目がXに来て、16R。ほっとする瞬間。その後、3発、4発で、8R二回。だが、次に左1右1の計2発拾わせるのに、何と300発使った。「鳴かない、寄らない」の二重苦。その後は少々回復したが、寄りが悪いのが伏兵で存外に苦しめられる。その後デジタルのツキで16Rが3連荘して出玉が約5000発を超える。が、3Rの後、本格的に嵌ってしまった。2000箱飲ませても駄目。下から箱を上げて続行するが、とにかく「鳴かない、寄らない、Xらない」の魔の三拍子が揃ってしまった。役デキは相変わらず良く真ん中に乗るがとにかくXを外し捲くる。とうとう4500発飲まれてしまった。田山氏が何個落ちと言われていたが、自分にもある。経験上4500発を超えて出玉が上向かなければその台は駄目。結局、「鳴きムラ、拾いムラ、役デキムラ、Xムラ、デジタルムラ」が最低でも、出る台では4500発以上飲まれることは滅多にないということだ。
残り200発、4800発飲ませた左46・SPルート5発目がじりじり回って漸く、漸くXに収まる。嬉しいと言うよりも最早気の抜ける瞬間だ。デジタルはよくあるパターンの嵌った後の3R。まあ、良い。これ飲まれて帰ろうと思った瞬間、左2のSPルート2発目がXにきて今度は16R。嬉しいが、気分は帰宅モードだったから少々複雑。さて、次は左18発右1発だったが、鳴き捲くり400発で済む。その後来ました連荘の嵐、16Rの後、3Rを挟んで16Rの4連荘で一気に回復。今までのすったもんだが嘘のよう。ついでに、ほぼ同時に着席した9番のお父さん、10番のお母さんも16Rばかりの連荘でお二方とも下に2箱ずつ。三台並んでほぼ同じ時刻で同じ様な連荘をするのだから怪しい、と言うことはない。なにせこんなこと初めてだから。俺の台はその後も8Rと3Rの2連荘を挟んで16R4連荘で約7000発。だが、やはり鳴き、と拾いが今一歩。確実に釘は閉められている。従って出玉は積んでいるが、これは実力以上。デジタルのツキだけで出玉が出た。勝負に負けて試合に勝ってしまった。3Rの後、左28発右4発拾わせるのに1450発使って止めにする。はらはらドキドキ楽しかったが、存外に疲れた日だった。
8番台のみ 16R・8R・3Rの比率 16・7・8 SPルート36発中13当・左252発中18当
使った玉675発 出玉5300発