どのようなタイプのビオトープにするか、植物相(フロラ)などを本や図鑑で調べ、この場所にふさわしい整備計画を考えました。
今回は休耕田を使用することと、付近に冬季堪水(冬に田んぼに水を張る)している水田が無いことから、浅い水辺を中心としたビオトープをつくる事に決めました。(写真は工事前の現場の写真。計画を立てる時は、見た目や人間だけの都合を考えるのではなく、周辺の環境を調べ、その場所にくらす生き物の立場にたって考えましょう。そのためにはきちんとした事前調査や計画は欠かせません)
予定地にはセイダカアワダチソウなどの雑草が生い茂っていたので、一度、トラクターですべて鋤き込み、整地に邪魔になるような大きな株は、手作業で取り除きました。
休耕してから時間が経っていたので、土壌の保水力を高めるためベントナイト(粉末状の粘土)の散布し、トラクターでの攪拌を繰り返しました。
(写真は手でベントナイトを散布している様子)
現場はもともと田んぼだったので、横に小さな水路(てび)がありましたが、それだけでは水量が足りませんでした。そこで少し離れた所に渓流があり、渓流の水をホースを使いビオトープの中に入れることにしました。
(写真は水源となっている渓流。ここにも多くの生きものが棲んでいる)
ビオトープの中に水を入れた当初は、水がかなり濁りましたが、しばらくすると落ち着きました。
ちなみにビオトープに入れてあふれた水は、パイプを通って下の田んぼに流れるようにしていますが、米作りにとっても、冷たい山水をそのまま使うよりは、一度、暖められた水を利用した方が稲の生育がよく、ビオトープをつくることで、稲の生育促進と生物保護の一石二鳥の効果が上がりました。
(写真は水を入れた直後の様子。徐々に水がたまっていく様子にちょっと感動)
土手や水中にも植生が回復し、見た目にも美しい状態になりました。トンボなどの昆虫や、カエル・イモリ等の両生類も定着し、ビオトープの中や周囲はにぎやかになりました。
(開放水面も十分あり理想的な状態。これ以降、生い茂る草との戦いが始まった…)
完成後2年目にはセリが大繁殖し、ビオトープの水面の1/3を占拠しました。出来る限り手で抜くと、翌年からはミゾソバが繁茂するようになり、セリの姿はほとんど見られなくなりました。
現在はミゾソバが優先種として、毎年水面が見えなくなるくらい茂ります。
ここのビオトープの維持管理作業は主に2つ、@水がかれないようにすること、A植生(優先種)管理です。
(写真は繁茂したミゾソバで水面が覆われたビオトープ)
定期的に「あーと村」の行事に合わせて、子供向けの観察会を行っています(時にはビオトープの周りが子供で一杯になることも)。その他に、スタッフを中心に、月一回のペースでモニタリングや管理作業など行っています。
ビオトープも6年目以降、植生管理などを定期的に行っているため、現れる生物の種類にも、大きな変化はなくなりましたが、それでもゆっくりと変化しているように感じます。
また、普段何気に見ている生き物でも、詳しく観察してみると、新しい不思議を沢山見つけることが出来ます。
私が初めて手掛けたビオトープなので、いろいろ戸惑う場面も多々ありましたが、様々な人々のサポートを受けこれまで順調に推移しています。
ここのビオト-プは単位面積あたりの生物種を出来るだけ増やす事を最重要事項としているので、引き続き適度な管理を行いながら様子を見守っていきたいと思います。
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