宮園小学校は広島市の西部、廿日市市の宮園団地の中にあり、背後には極楽寺山、眼下には瀬戸内海や宮島を見渡せる高台の中腹にあります。
学校ビオトープづくりの話は、学校のPTAの皆さんが「学校の中に自然に触れ合える場所を作ろう」と発起人となりスタートしました。
(写真はビオトープの造成場所の全景。法面の下に造成途中のビオトープが見える。)
宮園小学校のビオトープづくりでは、学校側の協力もあり、当初の計画で1000u。最終的には約700uものかなり広い予定地を確保することができました。また教育委員会など関連する行政機関からも全面的な協力が得られることになりました。
学校の校庭を使い、何もない場所に地域のボランティアの皆さんが手作りでつくったビオトープとしては、おそら中四国地方でトップクラスの大きさです。 全国的に見てもかなり大きな学校ビオトープがつくられる運びとなりました。
また、計画が固まるにつれ、平行して工事の内容や工程表もつくられ、具体的な段取りが決められていきました。
(写真は、打ち合わせの様子とデザインを決めるために製作したビオトープの模型)
本工事に着手する前に、準備作業として造成予定地にあったジャングルジムとサクラの木2本を移動させることになりました。しかし、どちらの作業も重機が使えず、人力で運ぶことに…。ジャングルジムが人力で軽々持ち上がるとは思っても見ませんでした。
桜の木は一輪車に乗せて運びましたが、木の重量でタイヤはが完全につぶれてしまいました。
また予定地あった砂場を別の場所への移設し、そのままでは搬入する土で埋まってしまうマンホール2箇所は、部品を継ぎ足し埋もれないように嵩上げ工事を行いましました。(工事に必要な資材や重機は、学校のPTA会長で、土木会社を経営されている篠川さんに御協力頂きました。)
(右から,桜の移植・砂場の造成・マンホールの嵩上げの様子。特に桜の移植では、皆さん疲労困憊の様子でしたが、移植した桜は無事に根づきました)
地域の子ども達や他のPTAの皆さんの関心を高めるために、学校にお願いして学校放送などで広報してもらったり、全校生徒対象でビオトープのデザインを募集する『学校ビオトープコンテスト』を実施しました。
加えて、地元公民館にも協力して頂き、学校周辺の『自然観察会』を行なうなど、様々な形で広報活動を行ないました。
(写真は子供たちが描いた設計図。延べ100枚以上の設計図が集まった)
ビオトープ予定地全体に土を入れ、マウンド状に盛土した後、里山を再現するエリアでは、搬入した土砂をすり上げて山を作りました。
10tダンプでおよそ123台分の量になった土砂は、学校の近くで行なわれていた砂防堰堤工事の排出土を、国土交通省のご好意で無料で運搬・搬入して頂きました。
設計図を基に、重機を使いながら大まかな形を整えていきました。この作業には述べ3日掛かり、その間2〜3台のバックホウとクローラ(土を乗せて運ぶ機械)をフル活用した大掛かりな作業となりました。
当初、盛土された土砂はふくらはぎまで埋まるぐらいの柔らかさでしたが、1ヶ月位経つとかなり締まった状態になりました。
池の形を重機で大まかに掘った後、赤土を貼り付け池の下地をつくりました。赤土に程度な水分を含ませて、特製の『たたき』で赤土を叩きながら均一に伸ばしていきました。
池の底面全体を赤土でコーティングした後、その上から防水シートを張りました。写真で黒く見えるのが今回使用した防水シート『パラシール』。公共事業などでも用いられる本格的なもので、樹脂製のシートの裏に『ベントナイト』と呼ばれる粘土が圧着されており、穴があいても粘土が膨張し漏水箇所が塞がる専用の高性能シートです。
今回は販売店の方に学校までお越し頂き、技術指導も受けながら作業を行ないました。
盛り土を施した箇所からの土砂の流出を防ぐため、段差が生じた場所には木で土留めを施し、雨などで土砂が流出しないようにしました。
この土留めに使った木材も、国土交通省から台風で流出した大田川流域の廃木を無料で頂くことができました。
完成から2年弱が過ぎ、部分的にですが植生が回復してきています。
今回の工事を通して、植生面で一つ面白い発見をしました。工事のたびに頻繁に掘り返されて(攪拌された)土では、植物の回復がかなり悪く、1年以上たった今でも草が生えている場所が少ない。
しかし、ほとんど攪拌される事が無かった場所では、工事の途中から草が茂り始め、現在では背丈の高い草もはえて来ている。
雑草はすぐにどんな場所でも入ってくると思っていましたが、発芽のタイミング?にあわせて撹乱を起こすと、さすがの雑草も簡単には進入してこれないのだと思いました。
土砂を満載した10tダンプが次々と土を降ろし、ドンドン積み上げていく様子は、学校ビオトープを作るというよりも、本格的な土木工事という感じでした。これほどまでに大掛かりで重機が活躍した学校ビオトープはあまり無いと思います。
これからはどのような生きものがやってくるのか、種類や数などをモニタリングし授業などで活用できれば、地域の環境を知る大きなきっかけになるのではないかと思います。
(このHPでは活動の概略を簡単に載せさせて頂きました。実際にはとても1ページでは書ききれない程、いろいろなことがありました。暑い日も寒い日も、足掛け2年間、忙しい時など土日両日使って作業を進めるなど、日程的にもかなりハードな作業でした。作業に関った皆さん大変お疲れ様でした)
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