古詩十九首  各首の特徴


其の一。行き行きて重ねて行く。
     「古来、中国文学は比喩の文学」と中国知識人は言う。」帰らぬ夫の身を切切として思う情が流露された詩。     裏面の詩の意味を強いて求めるならば、君を「白日」「奸臣」を浮雲に比喩できる が、意識的にそうした作      意でなく、一般庶民の抒情的な詩とみたい。
其の二。青々たる河畔の草。
     華やかであった娘時代に比べ今の淋しさが一段と強く感じられる、その婦人の春の怨愁が美しく艶に歌われ     ている。
其の三。青々たれ陵上の柏。
    
都会の人間の現実世界に駆って、享楽と野心の中に憂いを消そうとする、最後の「戚戚」が詩を引き締める。     人生の憂いこそがこの詩の基調となっている。
其の四。今日の良宴会。
     高尚な人材が登用されないのを惜しむと思想が婉曲功名に表現されている。とみる。
其の五。西北有高楼。
     音楽を託して自分の意中を現し知音の人を求めようとする孤独の人の気持ち。君の知られない孤独な臣が     悲しみをその君主に訴えた詩。と解釈。
其の六。渉江采芙蓉。
     相愛の男が遠く旅にあるのを女が詠んだものと、素直に解した。
其の七。明月皎夜光
      不遇を歎き、嘲罵を星に浴びせて、憤懣の情を吐いた一種憐れみと面白さを感じる詩。北斗・簑・牽牛など      の星に、名があって実が無い比喩を持ち出す。中国文学史などのの常套手段。
其の八。冉冉孤竹生。
      道義的・政治的な思想を表現する為に、この情話を借りたと言う説は取らない。
其の九。庭中有奇樹
      男女相思の情調を感じる。
其の十。迢迢牽牛星。
       七夕の星会の物語を借りて夫に離れて悲しむ女の心を述べたもの、と素直に理解したい。
其の十一。廻車駕言邁
       儒家的な立身栄名をあこがれる思想が、実はこの人生の儚さを感じる心から出発している。
       軽薄・物欲・利権が動機でなかったことは、古詩を味わって知ることができる。
其の十二。東城高且長。
       この詩は「詩経」」の典古に与り「晨風」「蟋蟀」の篇名を引用している。最後を「双飛燕」になりたいという       構想は。其の五。西北有高楼篇。と同じ。
其の十三。駆車上東門
       人間の生命観を歌う、永遠の生命が得られない人間の運命を歎く、古詩でも普遍的な題材
其の十四。去者日以疎
       古詩の中でも尤も有名な詩。人生流転の相を現す詩語。常套陳腐。語ること無し。
其の十五。生年不満百
        ロマンチックで浪漫的な人生観に基づくもの。年代相応感じ方が異なることを最近、頓に感じる。余命幾        何を知る人生に到るとロマンチックで浪漫的な人生観は無縁になる。
其の十六。凛々歳云暮。
       この詩は技巧的な表現が勝る。夢と現実。過去と現在。詩読感受性は年代と共に変化する悲しむき哉。
其の十七。孟冬寒気至。
       古詩の民歌的、素朴な感じの代表作と云える。写実的な詩材は技巧的のと対称的な意味で、やはり強く       迫るものがある。「三歳字不減」の一句は深意を言外に表す。
其の十八。客従遠方来。
       庶民的な臭いがある。上品な所謂、格調高い詩ではないが、俳諧的な興趣がある。
其の十九。明月何皎々。
       
感傷的で、凄艶の気がある。「思婦」の類する詩であり自分の主張を投入した強い意欲のある詩。
             
19tokutyou.html




                 Copyrightc 1999-2011"(IshiKyuuteiKanshikan)"All rights reserved.
                     IE6 / Homepage Builder vol.4