答兄機 (陸士龍)  文選・巻二十五
  兄なる機に答える
   
悠遠塗可窮    悠遠なるも 塗は 窮む可し
別促怨会長    別の促かにして 会うことの長きを 怨む
銜思恋行邁    思を銜みて 行邁を恋う
與言在臨觴    與ちて言うに 觴に臨む在り
南津有絶済    南津には 絶済 有るも
北渚無河梁    北渚には 河梁 無し
神往同逝感    神 往きて 逝感を同じくして
形留悲参商    形 留りて 参商を悲しむ
衡軌若殊迹    衡軌 若し迹を 殊にせば
牽牛非服箱    牽牛 箱に服くに 非ざるがごとし

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兄なる陸機と別れる悲しさを述べたもの。

(詩語)
促=(そく)=すみやか。
会長=「また会える時は、このさき長いことである」=会い難い意。
銜=(ふくむ)(いだく)。
=李善注本は{恩}につくる。
津=(しん){渡し場、の意。」船の着く場所、こと。
絶済=真っ直ぐに渡る渡し場。
逝感=逝は、逝く人。兄、陸機を言う。感は、心に感ずること。
衡軌=車の轅(ながえ)の端の横木と車軸。
牽牛=星の名前。毛詩の小雅「大東にvたる彼の牽牛は、箱に服くるに以(もち)いられず」。
服=朱熹の注に「駕す」とあり。
箱=(そう)=大車の箱。

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(訳文)
どのように路が遠くでも、行くことが出来るでしょう。しかし今は別れる時が差し迫り、此の後、
何時また会えるか分からないのが悲しい。行き進む貴方を恋い慕う思いを懐きつつ、
起き上がり、別の杯に望む。
我の帰る南の渡し場は有るが、兄の行く北岸には橋がありません。
私の心神は兄に随い行き、兄の感じずることと同じになれるが、私の身体は此処に留まり、
貴方と別れて、参・商の二星のようになってしまう。
衡と軌とは、 若し迹を 殊にするような事が有れば、牽牛と言う星の名ばかりで、車に着けられぬことと同じである。



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