韓非子

リーダーが心得るべき事を簡潔に説明する韓非子は古来から重宝するリーダーは多い。韓非子曰,『明君は,二つの柄を握るだけで,臣下を統率する。二つの柄とは刑と徳である。刑徳とは何か。刑とは刑とは罰を加えること。徳とは賞を与えることである。部下は罰を恐れ,賞を喜ぶのが常だ。虎が犬を服従服従させるているのは,虎に爪・牙があるからである。その爪と牙を虎から取り上げて犬に与えたとしたししたら,逆に虎のほうが犬に服従しなければならない。もし,君主が此の二つの柄を手ばなし,臣下に之を使わせたら,君主は逆に臣下に統率されるだろう。』

誠に凄まじい。虎と犬を例える。韓非子は両者の関係は計算ずくで成り立つ。食うか食われるかの一つなのだ。先見性の無い経営者は言う。人格の形成に努める。相互理解につとめる。部下を信頼する。

儒教的な「愛」とか「仁」とか教育勅語が此の日本に蔓延る。孔子様が聞いたら涙を流して喜ぶことが,ごく一般的である。逆に部下に逃げられ,部下が一派を立ち上げ成功する例は多い。が,韓非子は「人を信ずることは有害である。人を信ずれば,自分が韓非子人に抑えこまれる」韓非子は真っ向うから否定し論述している

韓非子はなぜ,このような論法を取るのか?韓非子曰,『君主と臣下の立場は矛盾する。』現代社会に通用する一面はある。ある特定の人間だけが悪とは論述はしていない。唯,人間は自己の利益の為に行動すると考えたのである。人間の性は本来,悪で有ると認識する性悪説にたっている。韓非子は臣下の実態を把握する七つの術の条件を示す。

一,臣下の言葉を事実と照合すること。
二,法を犯した者は必ず罰する,リーダーの威光を示す。
三,功労者には必ず賞をあたえる,全能力を発揮させる気持ちをもたせる。
四,一人,一人の発言に注意し責任をもたせる。(一人,一人の発言に注意し有能か無能か判断する。)
五,詭計を使う。六,知らないふりをして相手を試すこと。  
七,嘘やトリックを使って相手を試すこと。

「ああ,この本の著者に会うことができるなら,わしは死んでもよい」韓非子の著作を読んで思わず嘆声を漏らしたのは秦王・政。のちの始皇帝である。果たして和平の為,韓は使者として韓非子を送って来た。引見した,始皇帝は大いに気にいった。李斯はお膳立てして迎えた韓非子とは同学である。能力の差は知り抜いている。自分の危機を始皇帝に讒言する。韓非子を韓の国に返すと秦が危ない。讒言を始皇帝も信じる。
始皇帝は李斯の讒言を聞きいれて韓非子を獄にくだしてしまった。李斯はすかさず獄中に毒薬を送って韓非子に自殺を強要する。
秦王が思い直して彼を赦免しようとした時には手遅れであった。韓非子は死に,韓もまた,まもなく秦によって滅ぶ。紀元前221年。秦は始めて天下統一を成し遂げた。秦王政は始皇帝になるが,その諸政策はすべて韓非子が編み出した理論にもとずくものである。
韓非子は非業の死をしたが始皇帝が韓非子の論述を施行し韓非子の学説が知られた。始皇帝は韓非子の弟子と言はれる由縁である。