元好問(1190~1257)

金と言う異民族の王朝の偉大な詩人。金と言う王朝は(1115~1234)女真族の建てたものであるが、13世紀に入って蒙古に滅ぼされた。12世紀の中ごろ、1115年、中国東北ハルピン東南の阿什付近の女真人によつて建てられた。現在の吉林省、黒竜江省、ソ連領沿海州にツングース系の女真人が分布していた。女真人とは、十世紀以来の東洋史上に名を現わす東部満州土着の民族、ツングース族の一つで、別には女直とも言う。王室の姓は完顔氏。

金詩が注目され、元好問(元遺山)が尊ばれるようになったのは、同じ女真族の清朝の王室が評価したことと関係がある。元好問、字は裕之。山西省太原忻県の生まれ、号を元遺山。(御選金詩。天・地)を参考に詩を選んだ。御選金詩とは、清の聖祖の康煕48年に右庶子の張予章・他七人に勅して選進させた、御定四朝詩の中の金詩25巻をさす。四朝詩と言うのは宋・金・元・明の四代の詩をさす。

詩と言えば唐詩、唐代の詩につぐものと言う意識から四朝詩を選ばせたもので、康煕帝の序文を冠している。康煕帝はさらに康煕帝50年に御定全金詩74巻。中州詩をもととして詩人を2倍に、詩は3倍にした。

  老 樹
老樹高留葉。   老樹 高く葉を留め
寒藤細作花。   寒藤 細やかに花を作す
沙平時泊雁。   沙平らかにして時に雁を泊し
野廻已攅鴉。   野廻かにして已に鴉を攅む
旅食秋看盡。   旅食 秋看盡くし
行吟日又斜。   行吟 日も又斜めなり
干戈正飄忽。   干戈 正に飄忽
不用苦思家。   用いず苦に家を思う

  落 魄
落魄宜多病。   落魄 宜しく多病なるべし
艱危更百憂。   艱危 更に百憂す
雨声孤館夜。   雨声 孤館の夜
草食故園秋。   草食 故園の秋
行役魚頳尾。   行役 魚頳尾
帰期鳥白頭。   帰期 鳥白頭
中州遂南北。   中州 遂に南北
残息付悠悠。   残息 悠悠に付す

  九日詠菊
秋菊有何好。   秋菊 何の好か有る
袛縁風露清。   袛だ 風露に縁って清し
花中誰比数。   花中 誰か比数せん
霜後独鮮明。   霜後 独り鮮明なり
九日惜虚過。   九日 虚しく過ぐるを惜しみ
一尊還自傾。   一尊 還た自ら傾く
今年病居士。   今年 病居士
吟遶更関情。   吟じ遶って更に情に関す

  詠 懐

  横波亭為青口帥賦

  昆陽二首之一

  山中寒食

  除 夜