鮑 照
結客少年場行   結客少年場行
『?馬金絡頭     ?馬 金絡の頭に乗り
錦帯佩呉鉤     錦帯 呉鉤を佩び
失意杯酒間     意を杯酒の間に失い
白刃起相讎』     白刃もて起って相い讎い
追兵一旦至     追兵の一旦至るや
負剣遠行遊     剣を負いて 遠く行遊す
去郷三十載     郷を去って三十載
復得還旧丘     復た旧丘に還るを得たる
升高臨四関     高きに升りに四関を臨み
表裏望皇州     表裏の皇州を望む
九塗平若水     九塗は平かなること水の若く
双?似雲浮     双?は雲の浮べるに似たり
扶宮羅将相     宮を扶けて将相は羅り
挟道列王侯     道を挟みて王侯は列ぶ
日中市朝満     日中には市朝に満ち
車馬若川流     車馬は川流の若し
撃鐘陳鼎食     鐘を撃ち鼎を陳ねて食い
方駕自相求     駕を方べて自ら相求む
今我獨何為     今我 獨り何為れぞ
陥凛懐百憂     陥凛して百憂を懐う


○ ?馬=(古)。諸侯の乗用したもの。高さ六尺の馬。 馬八尺以上為龍。七尺以上為?。六尺以上為馬。(公羊傳)=公羊高?馬=駿馬。すぐれた馬。のこと
○ 公羊高、戦国時代、斉の人、孔子の弟子、穀梁傳とも言う。
○ 天子馬=曰:高さ七尺以上。
○ 諸侯の馬=高さ六尺以上。卿大夫の馬=曰:高さ五尺以上の馬。

○ 汗血馬=血の汗を流す=西域産の名馬。(赤い汗を出すので言う。)
○ 軍馬。戦争に使う馬。
○ 天馬。@すぐれた馬につける名称。A神話上のけものの名、
○ 胡馬。=北方・または西方の、えびすの馬。
○ 塞翁馬=人生の幸・不幸が変わり易い例え。
○ 駿馬=すぐれた馬。
○ 千里馬。=一日に千里も走る馬。
○ 戦馬。=戦場で戦う馬。
○ 竹馬=子供のころ仲の良い友達。
○ 騾馬。=馬より小さく、耳が長い。
○ 鞍馬=鞍を置いた馬。
○ 裸馬=馬が鞍をつけていない。

◎ 馬についての名言
○ 馬を下るべし。(逢橋須下馬。過渡莫争船。 橋に逢ったら、馬から降りるが好い、渡し場に来たら 船の先乗り争いを争ってはいけない。
○ 馬を相して・・(相馬失之痩、相士質之貧)往々馬の痩せているのを見て、良馬を駑馬と間違える。士の貧乏の生活を見て、賢士を俗人と見誤る。
○ 馬を問わず。(傷人乎。不問馬)人を傷いたりやと、馬を問わず。孔子が朝廷から帰ると、家の馬屋が焼けていた。孔子の先ず聞いたことは、人間に怪我は無かったか?と
言うことで、馬はどうした。とは聞かなかった。
○ 馬を駐め盃を啣んで謫居。 (嗟君此別意如何、駐馬啣盃問謫居。)嗟す君が此の別れ意如何、馬を駐め盃を啣んで謫居を問う。(七言律詩・蘆綸=送王李二少府貶潭峡)

○馬不伏櫪不可以奔道、士不素養不可以重国。 馬は櫪に伏せずんば以って走るべからず 士は素ろ養わずんば以って国を重くすべからず。(漢書・李尋伝)
  馬は人に飼いならさなければ、道路の上を走ることは出来ない、人は普段から修養をしていなければ国家の為に重要な仕事をすることば出来ない。「櫪に伏す」は、馬が馬小屋の中で寝ているこおから、人に飼われてる
○ 犬馬難。=犬馬は難し。犬や馬の絵を描くことは難かしい。犬や馬は誰でも知っているので、似せて描くのが難かしい。ありふれた日常的なものを表現することは、特異なものを表現するよりは難かしいものである。(韓非子・外儲説)
○ 相馬失之痩。相士失之貧。=馬を相しては之を痩せたるに失す。士を相しては之を貧に失す。(史記・滑稽伝)=馬のよし悪しを見るにとき、馬が痩せて見えることのために良馬を駄馬と見誤ることがある。人物を判断するときも、人の外見の貧弱さゆえに賢人を凡人と見誤ることがある。外見だけから物事を判断してはならない。
○ 謂鹿為馬。=鹿を謂いて馬と為す。(史記・秦始皇本紀)=鹿を馬と言い張る。人を愚弄して、白を黒と言い張ること。無理強いする例え。秦の趙高は始皇帝の死後、丞相となって擁立した幼少の皇帝(胡亥)に、鹿を献上しておいて自分の権力で、それを馬だと押し通したと言う例。
○ 老馬反為駒、不顧其後。(詩経・小雅)=老馬を反って駒と為し、其の後を顧りみず。
老いた馬を子馬同然に扱い、自からが老いた後のことを考えない。
〇 馬鳴而馬応之、非知也。(荀子)馬鳴きて馬、之に応ずるは知に非ざるなり 、
  一頭の馬が鳴いて他の馬がこれに応じて鳴くのは、同類を呼びあうからであり、知恵
  が働くからではない。人とて同じことで、「類は類を呼ぶ」ものである。

◎ 呉鉤に関して刀剣の出典。

◎ 属鏤の剣
◎ 魚腸の剣
◎ 湛盧の剣
◎ 鹿盧の剣
○ 呉鉤=呉の国の名産の刀。
○ 属鏤の剣=名剣の名。呉王は之を伍子?に給り、自殺を命じた。
○ 魚腸の剣=一名、属鏤の剣
○ 湛盧の剣=呉王の宝剣。蘇東坡。虎丘寺詩。湛露誰又見、秋水光煌煌
○ 白刃=光る刃。
○ 刀刃=刀の刃。刀。
○ 自刃=自害。自尽。刃物で自殺する。
○ 男児重意気、何用銭刀為。(卓文君「白頭吟」)男児は意気を重んず、何ぞ銭刀を用いるを為さん、男子というものは互いの気性を重んずるものである。どうして、金銭などを用いて交わりを深めようとする必要があろうか。
〇 虎丘塔の下に池があり、自然石に彫られた『虎丘剣池』と朱書されている。書家として第一人者と言はれる唐代の「顔真卿」の筆によるもので、数多い中国磨崖の碑の中でも屈指の作と言われ、 春秋時代の呉王闔閭の墓地であったと伝えられている。
墓について古書に「銅槨三重、水銀を傾けて池と為し、黄金珍玉を鳧雁と為る」。とある。呉王は剣が好みだったので、葬る時に専諸・魚腸など三千本の剣を副葬したと言う。この剣池は長方形で、深さ7メートルの泉水。両側に切り取ったような峭壁が聳えて、藤の蔦に覆われ深遠な雰囲気を漂わす。  秦の始皇帝と呉の孫権が巌を穿って剣を掘り出そうとした。
結果は共に剣は得られず、穿つた穴が池になったので”剣池”と命名したと伝えられ,また一部には宝剣を鍛える際、焼きを入れた所とも言はれ伝えられている。古来、呉は名剣によって知られている伍子胥が死を賜った時に贈られたのが『属鏤の剣』。(しょくる、の剣)伍子胥はしばしば呉王を諌めたが、きかれず、ついには「属鏤の剣」の剣をたまわり、死んだ。
臨終の時、その子を戒めて、『わが首を南門にかけよ、越の兵の来るのを見よ。わが屍をナマズの皮に包み江の中に投げ入れよ。朝に夕に潮に乗り来たり、呉の国の敗れるのを見よう』 と言った。これから、海門山から潮は高さ数百尺に押し寄せ、銭塘の漁浦を越えて、はじめて低くなった。朝、夕にふたたびやって来ては、その音は震え怒り、百余里にわたって雷が走り、稲妻が光り、そこで廟を建ててまつった。(広記)
王僚暗殺に用いたのが『魚腸の剣』。
ほかに『湛盧の剣』。(左思・呉都賦)呉鈎越棘、純鈎湛盧。(湛盧の剣)には蘇東坡の「虎丘寺」に詳しく述べられている。(蘇州・虎丘の傍に「剣池」があるその由来)
○ 属鏤の剣
○ 魚腸の剣
○ 湛盧の剣
○ 鹿盧の剣。玉の飾りのある剣。
「史記・剣客・荊軻伝」=正義曰、鹿盧剣可負而抜。
       [宋書・礼志]=剣不得鹿盧形。(注)古剣首以玉作鹿盧謂之鹿盧剣
              剣は鹿盧形を得ず。(注)古剣首 玉を以って鹿盧と作す。
之を鹿盧剣と謂う。
  参考文献
      佩文韻府。韻隅大成。史記・剣客列伝。大平広記。大漢和辞典。新字源。
      中国古典名言辞典。中国名言名句集。