○○ 省 墓

     魁然迎我古鷹山。     魁然として我を迎える 古鷹山
     大衍年逾懐故関。     大衍 年逾 故関を懐う
     柏樹鳴條風不止。     柏樹 條を鳴ならし 風止まず
     墓前稽首愧痴顔。     墓前 稽首 痴顔を愧ず 

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     【語意】 省墓(せいぼ)墓参り
        ○ 魁然: すぐれて大きなさま。どっしりして動かないさま。
          安らかなさま。
        ○ 古鷹山: 山名。
        ○ 故関: ふるさと。
        ○ 柏樹鳴條風不止: 故事成語(韓詩外伝・九)風樹の嘆。
           (親に孝行したいと思うとき已に親はいない。)
        ○ 柏樹: このてがしわなど常緑樹。
        ○ 稽首: 座って頭を地面に暫くあいだ着けている礼。
        ○ 痴顔: おろか者。


             書屋卜築偶一絶 

        風揺蕉葉緑天舒。       風 蕉葉を揺るがし緑天舒なり
        衣羽山隈新草蘆。       衣羽山隈  新草蘆
        擁膝長吟凝黙想。       擁膝 長吟 黙想を凝らす
        燕泥時穢読残書。       燕泥 時に穢す  読残書

       【題目】 書屋卜築し偶々一絶。(書斎を卜築して偶々一絶を作詩す。)
        ○ 緑天: 芭蕉の緑あざやかな時節を言う。
          また、唐の僧侶・懐素の居所の名を緑天。芭蕉数万株を
          植えたから言う,今、中国湖北省の零陵県の東門外にあると言う。
        ○ 舒: (じょ) ゆるやか。おもむろ、の意を表す。
        ○ 衣羽山: 山の名。(梁川星巌が頼山陽を安芸の国、広島に
          尋ねた時、衣羽(江波)の旅亭で牡蠣を食べて詩に残した際、
          衣羽山が地名として残るに元ずく。
        ○ 隈: 山の曲がり入りかんだ所。水が岸に曲がりこんだ所。
              ここでは山の 麓の意。
        ○ 草蘆: 書屋。書斎。(詩的表現で屡、使う詩語)
        ○ 穢:(わい): けがす。よごす。