壬辰 元旦口号

    玉暦廻来復及辰    玉暦 廻り来って 復た辰に及ぶ
    枉教邦国歎沈淪    枉げて 邦国の 沈淪をして歎ぜ教む
    甲論乙駁誰懐慍    甲論 乙駁 誰が慍を懐う
    七十五春漱石身    七十五春 石に漱ぐ身なり

 ○語彙
 ○ 玉暦=暦 (こよみ)
 ○ 枉=(まげて) ひいて。ことさら。 
 ○ 甲論乙駁=甲乙論駁。
 ○ 甲乙=ものの順序。たれこれ。あれこれ。
 ○ 論駁=議論して相手の間違いを正す。討論して相手に反対する。
 ○ 慍(ウン)(オン)=感情がムツとする意を表す。不平不満をいだく。怒る。
 ○ 漱石(典故)=孫楚漱石。【晋書、列伝二十六。「世説」}に孫楚と言う人物あり。石に漱世を逃れ自然
   に親しむと言う意味のことを、石に枕とし流れに口をそそいで心を清めようと言う言葉で表現する積りだったが、言
   いそこなって、石で口そそぎ流に枕すると言ってしまった。   
 ○ 孫楚漱石は、夏目漱石の雅号の由来するところ。夏目漱石が名誉ある帝国大学を早期に退職したり、文学博士   号を辞退したり、小説「坊ちゃん」が示すように”つむじ曲りの性格を書く。中国古典書「蒙求」に仔細にある。漱石    は「蒙求」にもかなリ親しんでいた、ことが伺える。
       
 ○ 漱石。此処では、つむじ曲がり。性格が屈強、頑固。を言う。


         石 九鼎 著