故事成語考>2>史記

                   中国故事考  2
   ☆ 亜 父
   ☆ 過ちを救って贍らず
   ☆ 晏子の御
   ☆ 渭水尽く赤し
   ☆ 一字千金
   ☆ 移木の信
   ☆ 帷を下す

   亜父。 
楚の項羽の参謀、范増のこと。(羽項本記) 
「亜」は、次(第二番目)の意味で、楚の項羽が、その参謀の范増が大変にはかりごとが上手なので 尊敬することが父に次ぐ者であると言ってこの号をつけたのが由来。

   過ちを救いて贍らず
(酷史伝・杜周)。人間は自分の過去を正すのさえ容易ではない。
「贍らず」は、それをするのに日がたりないこと。手が回らないの意。できれば人の過失をも正し、すべての具合よくしたいが、自分の靖いつぱいで手が回らない、の意。

   晏子の御
(管晏列伝)。わずかの地位に満足して得意がるつまらぬ人物のこと。
「晏子」の馬車の馭者の妻が物陰からそっと見ていると、夫は四頭立ての馬車に鞭打って意気揚揚と、いかにも得意になって出て行った。夫が家に帰った時、妻は「晏子は背の低い小男であるが、斉の宰相としてその名は諸侯に知られている。しかし少しも得意そうな様子をしない。

それに反して、あなたは大男でありながら人の馭者となり、それに満足して得意な態度でいる。そんな人では、末の見込みがないので私はお別れしたいと思います」と離縁を求めた。そこで馭者はすっかり態度を改めた。晏子もその態度に気ずき、その理由を聞き、感心して重用するようになった。後に大夫にまで出世したと言う。自分の夫がわずかの地位であるのを自慢する、どこかの国の女。蓋し聞く可し。

   渭水尽く赤し
(商君伝)。罪人を処刑することの多いこと。
「渭水」は、甘粛省蘭州府渭源縣に源を発して陝西省に流れる川の名前。この沿岸に秦の咸陽があった。ここで法治主義の商鞅が厳しい法律を施行して、かず多くの罪人を毎日処刑した為にその血で渭水の流れがすっかり赤く染まったと言う。

   一字千金。(呂不韋列伝)。
詩や文章の優れていること。また、非常に貴重な文献のこと。
秦の呂不韋が『呂氏春秋』を著したとき、「一字でも添削できる者があったなら千金を与える」と言って賞金をかけたことからきた言葉。当時これに応ずる者がなかった。文章が立派では無く呂不韋の権勢を恐れた為だと言はれている。

   移木の信
(商君列伝)。約束を実行する事のたとえ。
秦の商鞅が法律を改正したときに、大木を国都の南門に立て、これを北門に移す者には十金を与えると触れたが、恐れて誰一人も移す者がいなかった。そこで五十金に増したところが、これを移した者があったので、約束どうり金を与えて、政府を信頼すべきことを示し法の公布に権威をもたせたと言う。

   帷を下す
(儒林列伝・董仲舒)。熟を開いて弟子たちに学問を教えること。
「帷」は、とばり、たれぎぬで、部屋や広場の一点などを囲んでたらした幕の意。漢の大学者の董仲舒は、大学の教授となったときも帷をたれ下げ、その陰で講義をし、弟子たちは古い順序に従いその教えを伝え、弟子の中にはその顔さえ見たことのない者がいた。彼は精進を積み重ね、三年間も自分の家の庭さえも見たことが無いほどであった。




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