故事成語考>4>史記
                  故事成語考 4 史記
   ☆ 堅白同異の弁       ☆ 市道の交わり
   ☆ 五月子は養わず      ☆ 千慮の一失
   ☆ 菜薇の歌          ☆ 楚三戸
   ☆ 沙中の偶語         ☆ 素封
   ☆ 蚕 食            ☆ 環の端無き若し
   ☆ 歯牙に置く          ☆ 地に二王なし
 



堅白同異の弁 (孟子荀卿列伝)
是を非とし、非を是とし、異を同とするようなこじつけ。詭弁を言う。中国の戦国時代に、趙の国んの公孫龍が唱えた詭弁。堅くて白い石は、眼で見るとときは色の白いのは解るが、、堅いことは解らない。堅くて白いと言う概念は成り立たない。白い石と堅い石との二つの概念があっても、全然別のものである。

五月子は養わず (孟嘗君伝)
五月生まれの子は、親の害になるから養育しない。中国の古い俗信。戦国時代の孟嘗君は五月五日生まれ、父の田嬰は『五月生まれの子は背丈が戸の高さになると、父母に迷惑をかけるから養育するな』と母親に命じた。が、母はひそかに、その子を育てた、と言う話が伝えられている。

菜薇の歌 (伯夷列伝)
清廉潔白な聖人伯夷・叔斉の辞世の歌。周の武王が殷を滅ぼして天子となった時に、伯夷、叔斉が周の穀物を食うのを恥じて首陽山に隠れて薇を食って命をつないだが、遂に餓死して死に臨んで詠じた歌。

左建外易 (商君列伝)
不正を行って自分の威勢や権力を伸ばすこと。『今、あなた(商鞅)の決めた制度は道理にそむき 変更した国法は道理にたがい、これを以って人民を導く教えとすべきではありません』

沙中の偶語 (留侯世家)
臣下がひそかに陰謀をたくらみ、謀反の相談をすること。漢の高祖が功臣二十余名を大名に取り立てて、他の諸侯に対する論功行賞が未だ決まらない時に、その諸侯が砂上に坐り謀反の相談をしているのを見た。不思議に思った高祖は最も信頼している張良に「彼らは一体何んの話をしているのか」と聞くと、良は「謀反の相談をしている」と答えたと言う故事に基ずく。

蚕食 (秦始皇本紀)   
他人の領土をしだいに侵略併呑すること。蚕が桑の葉を回りからだんだん食って広げていき、最後にはすべてを食いつくしてしまうこと。他国または他人の領地などを端の方からジワジワと侵略していく意につかう。

歯牙に置く (叔孫通列伝)  
論議の対象とする。取り上げて問題にする。『あれは只の集団の盗賊・ネズミや犬のようなコソ泥のたぐいにすぎず、問題にするに足りません』

市道の交わり (廉頗列伝)
利益だけを目当てにする交際。『そもそも天下の人は、すべて商売のやり方で交わるものです。主君に勢力があれば主君に従い主君に勢力が無ければ主君から去る、これが当然の道理であります』

千慮の一失 (淮陰侯列伝)
思わぬ失策。 『賢人も多くの考えの中には、たまには間違いもある。愚者でも多くの考えの中には必ず一つの取り得はある』

楚三戸 (項羽紀)
たとえ少人数でも敵を滅ぼすことが出来ると謂う例え。秦が六国を滅ぼすとき、秦に最も抵抗しなかったのは楚の国であるのに、楚の懐王が秦の国に入ると捕らえて帰さなかった。楚の秦に対する深い恨みはここから始った。陳渉の乱が失敗した時に呼応して起こった頃梁の事後策に会合した、奇策の人范増が楚の南公の言葉として言ったもの。

素封 (貨殖列伝)  
財産家。金持ち。『今、朝廷からの俸禄のたまものや、爵位、領地からの収入も無いのに、楽しみがこれと肩を並べるものがある。これを素封と言う。』

環の端無きが若 (田単列伝)  
めぐりめぐって終るところがない。荀子は唯一の統一原理の基づいて雑多な万事万物を処理し、始れば終わり、終ればまた始ると言うふうに、まるで圓環に端が無いように、どこまでも、そのやりかたを続けていくという例え。

地に二王なし (高祖紀) 
国に二人の君主があるはずが無い。最も貴いものに二つはない。天に二つの太陽がないように、この地上にも決して二人の王者が存在することは絶対に無い。



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