古詩十九首  其の十八  客従遠方来

客従遠方来。  客 遠方従り来り
遺我一端綺。  我に一端の綺を遺る
相去萬余里。  相い去ること萬余里なり
故人心尚爾。  故人の心 尚を爾(しかり)しなり
文綾双鴛鴦。  文綾は双鴛鴦
裁為合歓被。  裁ちて合歓の被を為る
著以長相思。  著するに長く相い思うを以って
縁以結不解。  縁どるに結びて解けざるを以ってす
以膠投漆中。  膠を以って漆中に投ぜば
誰能別離此。  誰か能く此に離別せんや

鴛鴦模様の綵。それで縫う夜着の裁ち方。縫い方に夫を思う情を絡ませた詩。庶民的な臭いがある。上品でも格調高さでもないが、所謂、俳諧的な興趣がある。「綿」を以て「綿綿」の思いにかけた言葉遊びは、中国語には古くからある一つの修辞法とは言いながらも一種のユーモアな感じを出している。

詩語解説;
  一端:一丈八尺
  綾;あやぎぬ
  故人;ここでは夫のこと。
  爾:しかり。そのようだった。
  双鴛鴦:仲むつまじい夫婦のこと。
  合歓:夫婦が合い喜びあう。転じて,表裏2枚の合わせ縫いのこと。
  被:夜着のこと。
  著:その中に綿を入れる。
  結不解:結んで解けない様にする。夫婦の心が結びついて離れない。
  膠(にかわ);粘着力が強い故,言う。
  漆(うるし):粘着力が強い故,言う。

     09/06/23     石 九鼎