古詩十九首  其之七
      

      明月皎夜光。   明月 皎夜光皎たり
      促織鳴東壁。   促織 東壁に鳴く
      玉衡指孟冬。   玉衡 孟冬を指し
      衆星何歴歴。   衆星 何ぞ歴歴たる
      白露霑野草。   白露 霑野草を霑おし
      時節忽復易。   時節 忽まち復た易はる
      秋蝉鳴樹間。   秋蝉 樹間に鳴き
      玄鳥逝安適。   玄鳥 逝りて安くにか適なう
      昔我同門友。   昔し我れ 同門の友
      高挙振六翮。   高く挙がり六翮を振るう
      不念携手良。   手を携へること良と念はず
      棄我如遺跡。   我を棄てること遺跡の如し
      南箕北有斗。   南のかた箕 北には斗あり
      良無磐石固。   良に磐石の固とより無くんば
      虚名復何益。   虚名 復た何ぞ益せん
語釈;;
      夜光::月。 皎::白い,さま。
      促織(ソクショク)= こうろぎ,
      玉衡:: 北斗星の柄の部分に当たる所の第五星。
      指孟冬;;孟冬は冬の初め,北斗星の柄の先が指す方向が冬の孟(始め)に当たっている      漢の高祖が十月を年の初めとしたので,初秋七月が冬の孟めになる。
      玄鳥;;燕のこと。
      六翮::翼の突端に有る,利き羽根。羽根が六本ある。
      遺跡;;星の名,彦星のこと。  
詩意=秋の夜空を仰ぎ,立身出世した友に比べ,自分をかえり見て憂い嘆く詩歌である。詩中の北斗星,箕,牽牛などの星に,名が有り,実がないと言う例えである。古来,中国文学は「比喩」を以って表現する。中国文学が比喩の文学たる由縁が此処に奈何なく表現されている。又,詩中に「対句」を以って書く。読む。核心は此処にある

   09/06/23     石  九鼎