古詩十九首  其之八

      冉冉孤竹生。    冉冉として孤竹生じ
      結根泰山阿。    根を泰山の阿に結ぶ
      與君為新婚。    君と為新婚を為すは
      兎糸附女蘿。    兎糸は女蘿に附くなり
      兎糸生有時。    兎糸は生ずる時に有り
      夫婦会有宜。    夫婦は会うに宜有り
      千里遠結婚。    千里 遠く婚を結び
      悠々隔山陂。    悠々として山陂を隔つ
      思君令人老.。    君を思えば人をして老い令む
      軒車何来遅。    軒車 何ぞ来たること遅き
      傷彼尢哩ヤ。    傷むらくは彼の尢魔フ花
      含英揚光輝。    英を含みて光輝を揚げ
      過時而不采。    時を過ぐれども而も采らず
      将随秋草萎。    将に秋草の萎むに随はんとするを
      君亮執高節。    君亮に高節を執らば
      賎妾亦何為。    賎妾 亦た何かを為さん
語釈::
     冉冉::だんだんと。柔らかに。すくすくと。伸びる。
     阿:山の隈。曲がり入り込んだ処。
  泰山;中国五岳の第一の山。中国の信仰上の五つの霊山。泰山。崋山。恒山。崇山。衡山
     兎糸::ねなしかずら。蔓草の一種。
     女蘿;;ひかげのかつら。
     有宜::適材適所を得ることが大事。
     山陂::山の阪道。
     軒車;;大夫の乗る車。(車の柄が上方に反り上がって屋根がある。)
     含英::はなぶさの花が咲き出す情態。
     亮::まことに。
     高節::節を曲げない。操が高く心が動じない。節が高い。
     賎妾:(女子の謙遜した自称)  
     何為::何をすべきか。何もしないで,とき往く過ぎるを待つ。
詩意:
新婚に期待する若き女性の意が汲み取れる。兎糸,女蘿ともに女性が夫に対しての情愛が含まれる。心情の言葉。蘭花が顧えりみられず秋の霜に枯れる。中国一流の比喩。此の詩で女性が積極的なのは,「女性の老いの速さを畏れる」意と解釈するむきもある。


  09/06/23    石 九鼎