依田百川 依田百川(1834年-1909)幼名・幸造、信造。通称・七郎・右衛門次郎。字・百川。著書｢学海日録｣。漢文の作文、特に記事文に優れ、『譚海』は菊池三渓のの『本朝虞初新誌』と並び称される　森鴎外の「イタ・セクアリス」の文淵先生のモデルであることは有名。 　　　　　関雪江寄詩次韻以答 莫教俗子著鞭先。　　　俗子をして鞭先を著しむる莫れ 花好何妨月不圓。　　　花は好し何ぞ月の圓かざるを妨ぐ 八百松楼在何処。　　　八百松楼　何処に在る 一枝柔艫遡春川。　　　一枝柔艫　春川を遡る 　　　　　偶　作 陸税挽車水税船。　　　陸税は車を挽き　水税は船 屋祖又見及坊麈。　　　屋祖又た見る　坊麈に及ぶを 一輪好在簷端月。　　　一輪　好在なれ　簷端の月　　　　　好在＝ままよ、ほっておけの意。 尚喜官家不課銭。　　　尚を官家の銭を課せずを喜ぶ 　　　　　奉母賞花 板與到処相追随。　　　板與到る処　相い追うて随がう 柳緑桜紅春四囲。　　　柳緑桜紅　春四囲 莫笑膝前作児戯。　　　笑うこと莫れ　膝前　児の戯れを作すを 落花乱点老菜衣。　　　落花乱点　老菜の衣 　　　　　読電報 一百壯士奮大呼。　　　一百の壯士　大呼を奮はす 爾謂吾刀不利乎。　　　爾は吾が刀　利ざるかと謂う 霜峰触処応手倒。　　　霜峰　触るる処　応に手倒なるべし 鉄膊銅額視若無。　　　鉄膊銅額　視て無きが若し 賊塁一朝踏破畢。　　　賊塁一朝　踏破し畢る 賊徒聞之定戦慄。　　　賊徒らに之を聞て定戦慄 帰来笑問有酒否。　　　帰り来たり笑うて酒あるや否やと問う 血髑髏是好下物。　　　血髑髏是れ好下物 　　　　　聞吉松大佐戦没 吾創重不可生矣。　　　　　　　吾が創　重ねて生れべかざるか 且一快戦而死耳。　　　　　　　且つ一に快戦　死ぬるのみ 急叱馬丁扶上馬。　　　　　　　急　馬丁を叱し　扶けて馬に上る 噫誰健者吉松子。　　　　　　　噫々誰ぞ健者　吉松子 賊兵乗勢蜂擁来。　　　　　　　賊兵　勢に乗じて蜂擁来る 萬銃斉発声如雷。　　　　　　　萬銃　斉発　声　雷の如く 只有進死無退生。　　　　　　　只だ進死あり　退生なく 直前隠陣頭不回。　　　　　　　直前　陣に隠　頭を回らさず 君不見�ｹ蒐舞矛破燕軍。　 　君　見ずや�ｹ蒐　矛に舞て　燕軍を破りしを 其意特在要賞勲。　　　　　　　其の意　特に賞勲を要する在り 孰若将軍奮忠勇。　　　　　　　孰れ将軍　忠勇を奮するが若し 英気千秋捲風雲。　　　　　　　英気　千秋　風雲を捲く 　　　　　　　　　　　　　09/03/23 　　　　石　九鼎