香　谷 村田香谷名淑字蘭雪平安人天保二年辛卯生。 　　　　　二月十五日遊月瀬探尾山・・・・十五絶　（一） 此地誰開小洞天。　　　　此地　誰が開く　小洞天 石田渾作種梅田。　　　　石田　渾て田と梅を作す 人家分住渓南北。　　　　人家　分住う渓の南北 流水声中経幾年。　　　　流水声中　幾年を経る 　　　　　　又　　　　　　　（二） 一峰送去一峰看迎。　　　一峰　送り去て一峰看迎う 香霧沾衣骨亦清。　　　　香霧　衣を沾し　骨亦た清し 水與梅花争隙地。　　　　水と梅花と　隙地を争う ?然自作砕瓊声。　　　　?然　自から砕瓊の声を作す 　　　　　　　題自画山水 抱琴日暮向何辺。　　　　琴を抱て　日暮　何辺に向う 一路松風與石泉。　　　　一路　松風と石泉と 聴盡天然山水響。　　　　聴き盡す天然山水の響 初知高調属夢弦。　　　　初めて知る高調　夢弦に属す 　　　　　　　夜過壇浦 夜雨蓬窓夢忽驚。　　　　夜雨　蓬窓　夢忽ち驚く 鬼燐幾処減還明。　　　　鬼燐　幾処か減還た明かに 怒濤猶帯当年恨。　　　　怒濤　猶を当年をの恨を帯て 胸盪自成血戦声。　　　　胸盪　自ら成う血戦の声 　　　　　　　 　　　　　　　遊日田訪僧五岳三首。　録一 机上堆?附韈材。　　　　机上　堆?　韈材を附す 囲碁半日好傾杯。　　　　囲碁　半日　好し杯を傾けん 知他?啄門前客。　　　　知る他の?啄　門前の客 盡為請詩催画来。　　　　詩を請う為に画を催し盡し来る