孟浩然(689〜740)
名は浩、一に浩年、湖北省襄陽の人。孟襄陽とも称される。四十歳になって京師に出て、諸名士と交わった。玄宗の意に逆らい、都を放還される。のち、張九齢に召されて荊州従事の小官となる。開元28年病卒、年52歳。

五言古詩に巧みで、陶潜の流れを汲むと言はれる。盛唐の大維と名を等しくし、韋応物・柳宗元らの先達となった。著書に孟浩然集がある。唐書巻二百三、旧唐書巻一百九十。

  春 暁
春眠不覚暁。  春眠 暁つきを覚えず
処処聞啼鳥。  処処 啼鳥を聞く
夜来風雨声。  夜来 風雨の声
花落知多少。  花落つること 知んぬ 多少ぞ

  洛陽訪袁拾遺不遭    洛陽にて袁拾遺を訪うて遭はず
洛陽訪才子。  洛陽に才子を訪へば
江嶺作流人。  江嶺に流人と作る
聞説梅花早。  聞説らく梅花早しと
何如此地春。  何ぞ此の地の春に如かん

  送朱大入秦    朱大が秦に入るを送る
遊人五陵去。  遊人 五陵に去る
宝剣直千金。  宝剣 直い千金
分手脱相贈。  手を分つとき脱して相贈る
平生一片心。  平生 一片の心
 
   臨洞庭   洞庭に臨む
八月湖水平。  八月 湖水平かなり
涵虚混太清。  虚を涵して太清に混ず
気蒸雲夢澤。  気は蒸す雲夢の澤
波撼岳陽城。  波は撼かす岳陽城
欲済無船楫。  済らんと欲するに船楫無し
端居恥聖明。  端居して聖明に恥じる
坐観垂釣者。  坐ぞろに釣を垂れる者を観て
徒有羨魚情。  徒らに魚を羨むの情 有り

  題義公禅房   義公の禅房に題す
義公習禅寂。  義公 禅寂に習い
結宇依空林。  宇を結んで空林に依る
戸外一峯秀。  戸外 一峯秀で
階前衆壑深。  階前 衆壑深し
夕陽連雨足。  夕陽 雨足に連なり
空翆落庭陰。  空翆 庭陰に落つ
看取蓮花浄。  看取す蓮花の浄きを
方知不染心。  方に不染の心を知る
 
     石九鼎漢詩館   08. 08. 06