中国歴代女子詩選
唐代女子五言律詩選(一)
秋風函谷関応詔 徐 蘭(唐)
秋風起函谷 秋風 函谷に起き
朔氣動河山 朔氣 河山に動く
偃松千嶺上 松を偃る千嶺の上
雑雨二陵間 雨に雑る二陵の間
低雲愁広隰 低雲 広隰に愁う
落日惨重関 落日 重関に惨じ
此時飄紫雲 此の時 紫雲に飄る
応念真人還 応に真人の還るを念うべし
同太平公主遊九龍潭 武 后(唐)
山窓遊玉女 山窓 玉女の遊
澗戸対瓊峰 澗戸 瓊峰に対す
巌嶺翔双鳳 巌嶺 双鳳の翔
潭心倒九龍 潭心 九龍を倒しまにす
酒中浮竹葉 酒中 竹葉をうかべ
杯上写芙蓉 杯上 芙蓉を写す
欲験山家賞 山家の賞を験せんと欲す
唯有入松風 唯だ松風の入る有り
戦袍詩 兵士妻(唐)
沙場征戌客 沙場 征戌の客
寒苦若為眠 寒苦 いかんぞ眠らん
戦袍経手作 戦袍 手を経て作る
知落阿誰辺 知んぬ阿誰の辺に落るか 蓄意多添線 意を蓄え 多く線を添える 含情更着綿 情を含み 更に綿を着く 今生已過也 今生 已に過ぐる也
重結後世縁 重ねて結ばん後世の縁
帰番題虚池駅中屏風 宜芬公主(唐)
出嫁辞郷国 出嫁 郷国を辞す
由来此別難 由来 此に別難
聖恩愁遠道 聖恩 遠道に愁う
行路泣相看 行路 泣いて相い看る
沙塞容顔尽 沙塞 容顔 尽す
辺隅粉黛残 辺隅 粉黛 残す
妾心何処断 妾が心 何処か断ず
他日望長安 他日 長安を望まん 中秋夜泊武昌 劉淑柔(唐) 両城相対峙 両城 相い対峙す
一水向東流 一水 東に向い流れる
今夜素娥月 今夜 素娥の月
何年黄鶴楼 何年 黄鶴楼 悠々蘭棹晩 悠々 蘭棹の晩
渺々萩花秋 渺々 萩花の秋
無奈柔腸断 柔腸の断を奈んともする無し
関山総是愁 関山 総べて是れ愁う
写真寄外 薛援(唐) 欲下丹青筆 丹青の筆を下さんと欲す 先拈宝鏡寒 先ず宝鏡の寒を拈ず
已驚顔索漠 已に顔の索漠なるに驚く
漸覚鬢凋残 漸く鬢の凋残なるを覚る
涙眼描将易 涙眼 描て将に易き
愁腸写出難 愁腸 写き出し難き
恐君渾忘却 恐る君が渾べて忘却
時展画図看 時に画図を展て看る
贈外 崔仲容(唐)
所居幸接隣 居を所すに幸に隣に接す
相見不相親 相い見て 相い親しまず
一似雲間月 一つに似り雲間の月
何殊鏡里人 何ぞ殊なる鏡里の人に
丹成空有恨 丹成 空しく恨み有り 腸断不経春 腸断す 春を経ず 願作梁間燕 願わくは梁間の燕となり
無由変此身 此の身に変ずるに由し無し
拾得華氏花鈿以詩寄贈 張夫人(唐)
今朝妝閣前 今朝 妝閣の前
拾得旧花鈿 拾得 旧花鈿
粉汚痕猶在 粉汚の痕 猶ほ在り
塵侵色尚鮮 塵侵し色 尚ほ鮮かなり
曾経繊手製 曾経 繊手の製
貼向翠眉辺 貼って 翠眉の辺に向う
能助千金笑 能く助る 千金の笑
如何忍棄捐 いかんぞ 忍んで棄捐せん
銅雀台 梁瓊(唐)
歌扇向陵開 歌扇 陵に向って開く
斎行奠玉杯 斎行 玉杯を奠う
舞時飛燕列 舞う時 飛燕の列
夢里片雲来 夢里 片雲 来る
月色空遣恨 月色 空しく遣恨を遣す 松声莫更哀 松声 更に哀む莫れ
誰憐未死妾 誰か憐む未だ妾に死せざるを
掩袂下銅雀 袂を掩い銅雀を下る
道意寄崔侍郎 李冶(唐)
莫道恋浮名 道う莫れ 浮名を恋うと
応須薄官情 応に須らく薄官の情なるべし
百年斎旦暮 百年 斎旦の暮れ
前事塵虚盈 前事 塵虚 盈つ
愁鬢行看白 愁いて鬢の行きて白なるを看る
童顔学未成 童顔 学び未だ成さず
無過天竺国 天竺の国を過ぐる無し
依止古先生 依止す古先生
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石九鼎の漢詩館
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