贈弟士龍

行矣怨路長    行きて路の長きを怨み
惄焉傷別促    惄焉として別の促なるを傷
指途悲有余    途を指して悲は余り有る
臨觴歓不足    觴に臨みて歓は足らず
我若西流水    我は西流の水の若く
子為東跱岳    子は東跱の岳と為る
慷慨逝言感    慷慨して逝言感じ
徘徊居情育    徘徊して居情 育す
安得携手倶    安んぞ手を携えて倶にし
契闊成騑服    契闊にも騑服を成す得ん

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
呉を去り洛陽に旅たつ時に弟に与えて、別の悲しみを述べたもの。「文選」巻24.

(詩語)
惄=(しゅく)=憂い。
跱=(じ)=留まる。(五臣注本には、峙。とあり)
育=(いく)=(生ずる)こと。
契闊=(けいかつ)=勧め苦しむ。
成=(成りおおす)。
騑服=(ひふく)=(騑)=そえうま。四頭だての馬車の、両方の外側の馬。
(服)=騑の内側の馬。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(訳文)
今から洛陽に行く路は長く遥かことを怨む。君との別れが、さしせまっている、ことが痛く悲しい。その路を指さして眺めて悲しみは深い。
杯を挙げるが別れの為、歓びの情は起こらない。
西に流れる水のように、私は洛陽に去る。東に在る、山の如く動かない君は故郷に留まる。
去り往く私は別を悲しみ、嘆いて感慨深い。
留まる君は私を恋い慕い情の余り徘徊する。
何時か共に手を携え、騑・服の馬のように、常に一緒でありたいものである。





                                 Copyrightc 1999-2012"(IshiKyuuteiKanshikan)"All rights reserved.
                                                             IE6 / Homepage Builder vo16