成都府
乾元二年。古詩。歳末、成都府紀行の第十二首。旅の最後であり、遂に成都に入ろうとする

翳翳桑楡日。     翳翳たり 桑楡の日
照我征衣裳。     我が征の衣裳照らす
我行山川異。     我れ行きて山川異
なり
忽在天一方。     忽ち天の一方に在り
但逢新人民。     但だ新人民に逢う
未卜見故郷。     未だ故郷を見るを卜せず
大江東流去。     大江 東に流れ去り
遊子日月長。     遊子 日月 長し
曽城填華屋。     曽城 華屋を填め
季冬樹木蒼。     季冬 樹木 蒼し
喧然名都会。     喧然たる 名都会
吹簫間笙簧。     簫を吹き 笙簧を間う
信美無與敵。     信に美なれども 敵する無し
側身望川梁。     身を側てて 川梁を望む
鳥雀夜各帰。     鳥雀 夜各々帰り
中原杳茫茫。     中原 杳として茫茫たり
初月出不高。     初月 出でて高かからず
衆星尚争光。     衆星 尚ほ光を争う
自古有羇旅。     古より 羇旅 有り
我何苦哀傷。     我れ何ぞ 苦だ哀傷せん

○東流去、[一作従東来](一に東より来ると作る)。
○日月、 [一作去日]《一に去る日と作る)
○間、  [一作奏] (一に奏と作る)
『陶潜・帰去来辞』 [是
翳翳以将入] 《是れ翳翳として以って将に入らんとす)
『初学記・天部』 [淮南子云、日西垂、是在樹端、謂是桑楡](淮南子に云う日は西に垂れ是れ樹端に在り是れ桑楡と謂う。)
『潘岳・詩』 [山川邈離異](山川 邈離異を邈える)
『蘇武・詩』 [良友遠離別] (良友遠く離別す)
『謝朓・詩』 [大江流日夜] (大江 日夜に流れ)
『詩経・小雅・鹿鳴』 [吹簫笙簧] (吹簫笙簧)
『王粲・登楼賦』 [雖信美而非吾土兮、曽何足以少留](信に美と雖も吾が土に非ず、曽「すなわち」何ぞ以って少らく留するに足らん。)
『陶淵明・詩』 [自古有行役](古しえより行役有り。)

詩語解
翳翳] (朦朧として日の陰るさま。)
桑楡] (くわとにれ。日が西方に落ちる時、桑楡の樹の間に沈むところから、日の暮れがたを言う。)
[新人民](始めて逢う人々)
[未卜] (何時、故郷に帰れるか、未だ占わない。その望みが無いからである。)
[曽城] (曽は層。高く重なる城。)
[填] (満。)
[名都会] (有名な都会。唐代では揚一「揚州」。益二{成都」と呼ばれて長安・洛陽に次ぐ大都会であった。)
[鳥雀] (ねぐらに帰ること。暗に帰る所の無き己の身をいたむ。)
[初月・・・・・・](唐朝の中興も未だ微かに群盗の勢い尚盛んなことを暗示いている。)
[羇旅] (たび。)
[苦] (ねんごろに。切実に。)



                Copyright(C)1999-2011 by Kansikan AllRightsReserved 
                               ie5.5 / homepage builder vol.4"石九鼎の漢詩舘
"