堂 成  (堂成る)
堂が出来上がったことを詠ずる。上元六年春の暮れ。近体詩。

背郭堂成蔭白茅。    郭を背に堂成りて 白茅に(おう)はる
縁江路熟俯青郊。    江に
()う 路熟して 青郊に俯す
榿林遮日吟風葉。    
榿林(きりん) 日を遮る 風に吟ずる葉
篭竹和煙滴露梢。    
篭竹(ろうちく) 煙に和す 露を滴らす梢
暫止飛鳥将数子。    暫く止まる 飛鳥は 数子を
(ひき)
頻来語燕定新巣。    頻りに来る 語燕は 新巣を定む
傍人錯比揚雄宅。    傍人 錯って比す 
揚雄(ようゆう)の宅
懶惰無心作解嘲。    
懶惰(らんだ)にして 解嘲(かいちょう)を 作るに心無し。[]

○止。[一作下。]
○惰。[一作慢]
○揚雄宅。 前漢、揚雄の家は成都の西南部にあった。『左思・詩』(寂寂揚雄宅。)

詩語解
[背郭] 成都の城郭を背にすること。
[路熟] 路に通い慣れること。
俯青郊] 青青とした郊野を見おろす。『謝朓・詩』[結軫青郊路](軫を結ぶ青郊の路)。
榿] はんの木。
篭竹] 蜀に産する竹の名。
語燕] 囀るつばめ。
解嘲] 揚雄は、その著『太玄経』を嘲る人に太して「解嘲」の一文をしるして答えた。

詩意
城郭を背にして、白茅で屋根を覆うた草堂が出来た。江に添うた路も通い慣れて、青青とした郊外が低く見渡せる。榿の林は風に鳴る葉が日を遮り、篭竹の露を滴らす梢は靄を帯びている。鳥は三、四羽の雛を連れて暫く来て此処にとまる。燕は頻りに囀り新しい巣を此処に定めた。よその人はこの住居を、彼の揚雄の宅にくらべるが、それは間違いだ。私は懶け者だから、人から笑われたからとて、揚雄の様に解嘲の一文をしるす気持ちは無い。




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