江 村
錦江に添う草堂でのささやかな生活の様子を述べる。上元元年。近体詩。

清江一曲抱村流。    清江一曲 村を抱いて流れる
長夏江村事事幽。    長夏江村 事事 幽なり
自去自来堂上燕。    自ら去り 自ら来る 堂上の燕
相親相近水中鴎。    相親み相近づく 水中の鴎
老妻画紙爲碁局。    老妻 紙に画き 碁局を爲り
稚子敲針作釣鈎。    稚子 針を敲いて 釣鈎を作る
但有故人供禄米。    但 故人の禄米を供する有り
多病所須唯薬物。    多病 須つ所は 唯薬物
微躯此外更何求。    微躯 此の外 更に何かを求む

、 一作歸。
堂上燕、 一作上燕、
、 一作成。
多病句、詳註本作但有故人供禄米、
、一作分、
、一作無。


詩語
[江村] 川沿いの村。
[碁局] 碁板。
[釣鈎] 釣り針り。
[敲針] 針を敲いて曲げる。
[但有故人供禄米 仇氏は「文苑英華」に此の句を用いる。諸本は「多病所須唯薬物」に依るのが多い。]
[所須] 須は「まつ」「いるので」。
[微躯] つまらない身体。謙遜して言う。

詩意
澄んだ江がひと曲りに曲がり、江沿いの村は、村を抱く様に流れている。日の長い夏には事ごとく幽静なものばかりである、梁の(堂の上)上には燕が行ったり来たり、水の中の鴎は人に近づき鴎が互いに親しみ逢うている。老妻は紙に線を引き碁局を作っている。子供は針をたたいて曲げ釣り針を作っている。有り難いことに、禄米を送ってくれる旧友も居る。今、病身の自分に必要とするものは、薬品の類ばかりで、それ以外のもは自分の身体にとっては何も求めるものは無い。  


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