遺 興 ( 興を遺る) 上元元年。客寓での思いを述べる。近体詩。 干戈猶未定。 干戈 猶 未だ定らず 拭涙霑襟血。 涙を拭へば 襟を霑す血なり 梳頭満面糸。 頭を梳れば 満面の糸 地卑荒野大。 地卑くして 荒野 大に 天遠暮江遅。 天遠くして 暮江 遅し 衰疾那能久。 衰疾 那ぞ能く久しからん 応無見汝期。 応に 汝を見る期 無かるべし ○ 襟、 一作巾。 ○ 時、 一作期。 『李白・渡荊門送別詩』 山随平野盡、江入大江流。 [訳文] 戦が未だ平定されない。弟や妹は何処へいったのだろうか、涙を拭えば襟もとを潤すのは血の涙であり、頭を櫛で梳かせば白髪が抜け落ちて顔中に降り懸かる。 家の外を眺めると、地面は卑く平で荒れた野原が大きく横たわり、天は遠く連なって夕暮れの江は緩く流れている。自分の老衰疾病では、このさき、とても此の世に活きていることは無いだろうから、弟、妹たちよ、面会する時期は無いだろう。 Copyright(C)1999-2011 by Kansikan AllRightsReserved ie5.5 / homepage builder vol.4"石九鼎の漢詩舘" |