遺 興  ( 興を遺る)
上元元年。客寓での思いを述べる。近体詩。

干戈猶未定。    干戈 猶 未だ定らず
拭涙霑襟血。    涙を拭へば 襟を霑す血なり
梳頭満面糸。    頭を梳れば 満面の糸
地卑荒野大。    地卑くして 荒野 大に
天遠暮江遅。    天遠くして 暮江 遅し
衰疾那能久。    衰疾 那ぞ能く久しからん
応無見汝期。    応に 汝を見る期 無かるべし

○ 襟、 一作巾。
○ 時、 一作期。
『李白・渡荊門送別詩』  山随平野盡、江入大江流。


[訳文]
戦が未だ平定されない。弟や妹は何処へいったのだろうか、涙を拭えば襟もとを潤すのは血の涙であり、頭を櫛で梳かせば白髪が抜け落ちて顔中に降り懸かる。
家の外を眺めると、地面は卑く平で荒れた野原が大きく横たわり、天は遠く連なって夕暮れの江は緩く流れている。自分の老衰疾病では、このさき、とても此の世に活きていることは無いだろうから、弟、妹たちよ、面会する時期は無いだろう。


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