可 惜 成都での老年 春に遇えることを述べる。上元二年。近体詩。 花飛有底急。 花は飛ぶこと 底の急が有る 老去願春遅。 老い去っては春の遅からんことを願う 可惜歓娯地。 惜む可し 歓娯の地 都非少壮時。 都て少壮の時に非ず 寛心応是酒。 心を寛うすは応に是れ酒なるべし 遣興莫過詩。 興を遣るは 詩に過ぐる莫し 此意陶潜解。 此の意 陶潜解す 吾生後汝期。 吾が生 汝が期に後れたり [詩語解] [底] 何に同じ,俗語。 [春遅] 「遅」は早すぎぬことをを言う。 [歓娯地] 嬉しく楽しむ場所。處。即ち,春をいう。 [非少壮時] 老年なる,をいう。 [寛心] 心をくつげる。 [此意] 詩酒により自己を慰めることをいう。 [陶潜] 陶淵明のこと [解] さとる。 [吾生] 自分が生まれたとき。 [汝期] 陶潜を指す。期は生存する時期。(陶淵明の生存していた時期)。 [詩意] 何の急用があって,慌ただしく花は飛び散って行くのか,年老いてゆく身の自分は春の歩みの遅いことを願っているのに。本来ならば面白く,可笑しく過ごすべき處であるが,自分も時々,歓楽の席に連らなる身になったが,少壮の時でなく老衰の時であるのが残念で惜しい。今の自分の身出心をくつげる物といては,酒である。興をやるには詩に勝るものは無い。此の心持ちは昔,陶淵明が知っていた。自分の生まれが,彼より遅かりしことは残念である。 Copyright(C)1999-2011 by Kansikan AllRightsReserved ie5.5 / homepage builder vol.4"石九鼎の漢詩舘" |