擣 衣   
征戍の夫を思い砧(きぬた)を打つ妻の心に変わって詠う。

亦知戍不返。    亦た知る戍の返らざるを
秋至拭清砧。    秋至りて清砧を拭う
已近苦寒月。    已に近し苦寒の月
況経長別心。    況んや長別の心を経たるをや
寧辞擣衣倦。    寧ぞ辞せん擣衣の倦むことを
一寄塞垣深。    一に塞垣の深きに寄す
用尽閨中力。    用い尽くす閨中の力
君聴空外音。    君聴け、 空外の音を

[清砧] 砧は,きぬたの台石。
[苦寒月] 寒い,真冬の月。
[塞垣] 長城を言う。
[閨中力] 閨は婦人の部屋。女の力を盡くして衣を打つ。
[空外音] 空に響いて伝わる音。

詩意
守りに出ている吾が夫は、今年も帰らぬ、自分は砧を掃うて寒さの支度をする。最早、苦寒の月もま近い。長く別れている自分の心もちに、衣を打つことに疲れる位の事を厭うこおは無い。唯、着物を仕立てて奥まった遠い砦の処え送ろうと思うばかりである。此の屋根に住んでいる、か弱い女が精いっぱい出して衣を打つが、あなたは空に伝わる、その音を、どうぞ心とめてお聞きください。作者の立場より詠じた詩。



                       
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