擣 衣 征戍の夫を思い砧(きぬた)を打つ妻の心に変わって詠う。 亦知戍不返。 亦た知る戍の返らざるを 秋至拭清砧。 秋至りて清砧を拭う 已近苦寒月。 已に近し苦寒の月 況経長別心。 況んや長別の心を経たるをや 寧辞擣衣倦。 寧ぞ辞せん擣衣の倦むことを 一寄塞垣深。 一に塞垣の深きに寄す 用尽閨中力。 用い尽くす閨中の力 君聴空外音。 君聴け、 空外の音を [清砧] 砧は,きぬたの台石。 [苦寒月] 寒い,真冬の月。 [塞垣] 長城を言う。 [閨中力] 閨は婦人の部屋。女の力を盡くして衣を打つ。 [空外音] 空に響いて伝わる音。 「詩意」 守りに出ている吾が夫は、今年も帰らぬ、自分は砧を掃うて寒さの支度をする。最早、苦寒の月もま近い。長く別れている自分の心もちに、衣を打つことに疲れる位の事を厭うこおは無い。唯、着物を仕立てて奥まった遠い砦の処え送ろうと思うばかりである。此の屋根に住んでいる、か弱い女が精いっぱい出して衣を打つが、あなたは空に伝わる、その音を、どうぞ心とめてお聞きください。作者の立場より詠じた詩。 Copyright(C)1999-2011 by Kansikan AllRightsReserved ie5.5 / homepage builder vol.4"石九鼎の漢詩舘" |