白 帝 大暦元年秋。近体詩。夔州の人民の困窮に同情してよんだ詩。 白帝城中雲出門。 白帝城中 雲 門を出づ 白帝城下雨翻盆。 白帝城下 雨 盆を翻す 高江急峡雷霆闘。 高江急峡 雷霆闘い 古木蒼藤日月昏。 古木蒼藤 日月昏し 戎馬不如帰馬逸。 戎馬は如かず 帰馬の逸するに 千家今有百家存。 千家 今 百家の存する有り 哀哀寡婦誅求盡。 哀哀寡婦 誅求され盡くす 慟哭秋原何処邨。 慟哭す秋原 何処の邨に ○起句, 一作白帝城頭雲若屯。 ○翆, 一作古。 ○蒼, 詳註云,一作長。 ○戎, 一作去。 ○百, 一作十。 [詩語] [翻盆] 翻盆とは,盆中の水を ひっくり返す,kと。 [高江] 高所にある江。 [雷霆闘] 仇兆鰲は水声の比喩としている,(実景と看る,見方が多い。) [帰馬逸] (周の武王は「牛を桃林の野に放ち,馬を華山の陽に帰す」史記;周本紀。という。) [逸] 気楽なさま。 [百家存] 死亡流移のため,家数が減じたことを指す。 [誅求] 強引に税金を取りたてられる。 [詩意] 白帝城の城門の中から雲が湧き出す,城の下では雨が盥をヒックリ返したように降る。高所の江,急峻の峡には雷霆が闘っている。古木や蒼藤の茂みは日月も暗くなっている。戎馬が騒いでいるが,帰耕した馬の方が気楽そうでいる。以前は千戸もあった家は今では百戸だけ残っている。気の毒に思うのは寡婦(やもめおんな)が税金に苦しみ,秋の野の村で慟哭しているのが,聞こえて」くる。 [鹵莽解字]
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