早 起
上元元年春,庭仕事のため早く起きたことを述べる。

春来常早起。     春来 常に早く起き
幽事頗相関。     幽事 頗る相いかかはる
帖石防隤岸。     石を帖けて隤岸を防ぎ
開林出遠山。     林を開いて 遠山を出す
一丘蔵曲折。     一丘 曲折を蔵す
緩歩有躋攀。     緩歩 躋攀有り
童僕来城市。     童僕 城市より来たる
瓶中得酒還。     瓶中 酒を得て還る

詩語解
[幽事] 静かなしごと,三句・四句の帖石・開林等のことを指す。
[相関] そのことにかかりあう。
[帖石] 石をたたみあげる。
隤岸] 枝岸のkずれること。
[開林] 枝だの手入れをして,枝だをすかすこと。
[出] 現れ出させること。
[一丘] 自己の園丘をいう。
[曲折] 路のおれまがること。
[緩歩] ゆっくりと歩くこと。
[躋攀] よじのぼること。
[童僕] しもべ。
[来城市] 成都の街から戻って来る。

詩意
春から私は何時も早く起きる,それは庭仕事に掛かりあう爲である。それは石を畳んで江岸の崩れを防ぐ爲でもある。又,林の枝だを透かして遠方の山を見えるように現し出す。
ただ一つの丘であるうが折れ曲がった路があり,ゆっくり歩いたり,よじ登るする。丁度,城の方から,しもべが還って来た,彼れは瓶の中に酒を得て帰って来たのだろう。

鹵莽解字
此の詩の杜甫は生計に多少の余裕があり,官を辞して閑散の故,平生の貧乏くさい窮愁の詩に似ず,誠に杜甫の優遊自適の境遇が見えて面白い。
大作ではないが小品でも捨てがたい味がある。前聯の 「帖石防隤岸。開林出遠山。
の句に於いて「出」の字を置いたのは実に妥当,巧妙で,其の一字に遠神縹緲の致が含まれている。浦二田:曰,]
此の詩,幽事の二字を以て全詩を一貫している。前聯は幽事の外に在るもの,後聯は幽事の内にあるもの。小邱に登り童僕の酒を携えに逢うて其の幽興を遂げるは幽事中の幽事で,風流至極と言える。
作法は一句を以て二句を起こし,以て一事一物を言う。是を一篇の骨子と為し,中の二聯第二句を詳説し,結聯又第二句に因て総結する。是を”単蹄法”という。




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