熟食日示宗文宗武
大暦二年。寒食節にあたり,宗文・宗武の二子に書き付けてもせた詩。

消渇遊江漢。   消渇 江漢に遊ぶ
羇棲尚甲兵。   羇棲 尚を甲兵
幾年逢熟食。   幾年か熟食に逢う
萬里逼清明。   萬里 清明に逼る
松柏邙山路。   松柏 邙山の路
風花白帝城。   風花 白帝城
汝曹催我老。   汝が曹 我が老ゆるを催す
回首涙縦横。   首を回らして涙だ縦横たり

詩語解
[熟食日] 寒食節の異名。寒食節は冬至の後百四・五・六の三日で,その間には食事に煮炊きはしない,古来の習慣がある。
[宗文宗武] 作者(杜甫)の二子である。
[消渇] 病名。
[江漢] 蜀地東部をいう。
[清明] 節の名,寒食の翌日をいう。おおよそ陽暦の四月十二三日ごろにあたる。
[松柏] 墓樹である。
[邙山] 山の名。北邙山は河南省偃師県の北二里,洛陽と近く,墳墓が多い。寒食清明の頃に墓参のする風習がある。,作者は偃師県に祖先の墓がある。帰郷して墓参りが出来ないことを悲しんだ。
[風花] 風にひるがえる花。
[汝曹] 宗文・宗武の二子を指す。
[催我老] 子供の成長につれて自己が老いるのは子供らが老いを催させる如くである。
[回首] 洛陽の故郷の方へ振り向く。

詩意
自分は消渇の持病があるが江漢の地にあそび,旅住まいをしている,兵乱はまだ続いている。
幾年此の熟食日に出会うことことか,また此の遠方の地で清明の節を向かえようとしている。
故郷では邙山の路に松柏が繁っていることだろう。此処の白帝城では落花が風にひるがえされている。君達を育てて隔年年,寒食を迎えて行く間に自然と自分は老いてゆく。それで故郷の方を振り向いて,頻りに涙が流れるのだる。




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