対 雪 大暦四年冬,潭州にての作。 [題義] 雪に対したときの感じを述べる。人に酒をねだり贈ってもらったものであろう。 北雪犯長沙。 北雪 長沙を犯す 胡雲冷萬家。 胡雲 萬家に冷かなり 随風且間葉。 風に随い 且つ葉に間はる 帶雨不成花。 雨を帶びて 花を成さず 金錯嚢垂罄。 金錯 嚢罄くるに垂んとす 銀壺酒易賖。 銀壺 酒 賖り易からんや 無人竭浮蟻。 人の浮蟻を竭くさしむる無し 有待至昏鴉。 待つ有りて昏鴉に至る [詩語解] [胡雲] 北方胡地からきた雲。 [萬家] 城中の多くの家。 [間葉] 間は雑,葉にまじって飛ぶ。 [金錯] 金錯刀。王莽の鑄した銭の名。王莽は大銭・契刀・錯刀・五銖銭の四種の銭を造った。錯刀は黄金で文字を交錯して一刀直(アタイ)五十と表した。此処は単に銭の意に用いる。 [罄] 盡。 [銀壺] 銀製の酒壺。 [易賖] 賖は,おぎのる。かけにて買うこと。易は,豈易・不易。 [無人竭浮蟻] 竭は,「使吾竭」の意,「浮蟻」は,酒の泡状態をいう。従って酒をいう。 [有待] 待とは,送酒の人を待つ。 [詩意] 北方の雪が長沙まで犯してきた。胡地の雲が城中の万家の上に冷たく懸かっている。雪は風のまにまに木の葉と,入り交じって飛ぶが,雨を帯びている爲に花とは成らず融けて落ちる。折しも自分の財布には刀銭が盡きかけていて,銀壺の酒は,とても掛け買いする事が困難である。誰も私に浮蟻の泡立つ酒を飲み尽くさせてくれる人はいない,それでも,当て所もなく待つていたら,日暮れのカラスが騒ぐ頃になってしまった。 Copyrightc 1999-2011"(Touhoukan)"All rights reserved. IE6 / Homepage Builder vol.4 |