中国笑話集>3>
                    中国笑話選  
   
 1・けちん坊
まきを割らなければなくなったので、張さんは息子に言いました。
『三児儿や、隣の李さんの家に行って斧を借りてきなさい』 
息子は出掛けて行き、しばらくすると戻ってきて言いました。
『お父さん、あの人は貸してくれません。斧は他の人に借りていかれたと言うのです。でも、ぼくは斧が戸棚の下に置いてあるんをハッキリ見ました。』
張さんは、その話を聞くと、とても腹を立てました。
『李さんは本当にけちん坊だ。お前、今度は、王さんの家に行って借りてきなさい。』 

しばらくすると息子は帰ってきて父親に言いました。
『お父さん、あの人もやはり貸してくれません。僕が部屋に入って斧を借りたいと言うと、すぐ斧を寝床の方の下に隠しました。』
張さんは、それを聞くいっそう腹をたてました。
『李さんも王さんもけちん坊だ。一丁の斧のために友情をだい無しにするなんて、実に友達が無い』 『お父さん、どうしますか?』 息子が尋ねました。
張さんはちょっと考えてから。
『ウーン、あの二人のけちん坊は、ほっといて、やはりうちのあの新しい斧を使おう。』

  2・先見の明
張三と李四は用事があって一緒に出かけた。途中で急に雨が降り出してきた。李四は張三の傘の下に入って雨を避けた。張三は得意げに言いました。
『オレのかみさん、実に先見の明がある。今日雨が降ること知っていて、オレに傘を持たせたんだ。』李四も誇らしげに言いました。
『ワシの家内には、もっと先見の明がある。ワシが出かける時、家内が言うには  《あなた、傘を持って行くこと無いわ、どうせ張三は必ず傘を持っているのだから》 ということだった。』

  3・日を約束する
一度も人を招いたことの無いケチな男がいました。ある時、その下男が碗を一籠、川で洗っていると通りかかった人が尋ねました。
『これは珍しい、お前の家では今日、客を招くのかい。』
『うちの主人が客を招くなんて、あの世ですることだ。』
それを聞いたケチな主人。下男を叱って、
『軽々しく招待の日を約束してはイカン!。』

  4・葡萄棚
恐妻家の下役人、ある日、女房から引っ掻き傷を受けて出勤。知事が見て理由を下役人に聞くと。

『葡萄棚が突然倒れて来まして・・・・・・』
『うそをつけ。女房に引っ掻かれたのであろう。そんなに女房がこわいか。』
そこへ知事夫人が出て来て、こわい顔をしました。知事はオロオロしながら言いました。
『しばらく退っておれ。わが家の葡萄棚も倒れて来そうじゃ。』     

 5・毛が抜けないことを保障する。
ある男が洋服ブラシを天秤棒で担いで街に売りに来ました。看板には横に包不脱毛
の四文字が書いてありました。ブラシは大へんな人気でアッと言う間に売り切れました。

翌日、男はまた洋服ブラシを天秤棒に担いで売りに来ました。やはり昨日と同じ看板を掛けているところへ、きのう買った、買い物客が手に手にブラシを持って次々とやって来ては、取り替えてほしいしと言う。しかし男はどうしても替えようとしません。ある買主が大声で叫んで言いました。

 『お前の看板には【包不脱毛】(毛が抜けないことを保障する)とはっきり書いてあるじゃなか!。 たった二・三着の服にブラシを掻けただけで、毛が半分以上抜けた!どうして取り替えなのだ。』

ブラシ売りの男はワッハッハッと大笑いして言いました。  
『誰があなた方に逆に読ませたのかね。看板には【毛脱不包】(毛が抜けても保障しない)

とはっきり書いてあるでしょう。』

 6・父を焼く。
ある人、隣村の親戚に用事ができて留守をする事になり息子に言いつけました。

『留守中に来客があったら、一カ月ほどしたら帰って来るから、ご足労ながら、その頃またお越し下さいと申し上げて、お引取りを願うんだよ』
息子は少々頭が足りなかったので、その事を紙に書いて渡しておいた。息子はその紙を大事にとっておいたが、十日経っても誰も来ないので、要らないと思って焼いてしまいました。

ところが、その次の日に来客があったので、慌てて捜したが、紙はない。
『なくしてしまいました。』
客は驚いてたずねました。
『それはいつのことで?』
『きのう焼いてしまいました。』

 7・泥棒
貧しい家に忍び込んだ泥棒、なに一つ盗る物がない。チェッ!舌打ちして戸を開け、出て行こうとすると、ワラをかぶって寝ていた主人が呼び止めました。
『これ泥棒、戸をしめて行ってくれ。』
泥棒は怒った。
『なに一つ盗む物もないのに、俺を泥棒呼ばわりするとは、片腹痛いわい。』

 8・三蔵法師
艾子は酒が好きっで、酔ってないときはほとんど無かった。そこで弟子たちが、先生に酒をひかえさせようと思って相談した。
『酒が体にどんなに毒かとという証拠を見せて、先生をこわがらせるとこにしよう。そうすれば先生も少しは慎んでくださるだろう』
ある日、艾子はしたたかに飲んで、へどを吐いた。弟子たちは艾子に気づかれないようにしてそのへどの中に豚の腹わたを入れ、それを艾子に見せて言った。

『人間は五臓があるから生きていられるのです。先生は度を過ごして酒をお飲みになったため、とうとう五臓のうちの一つを吐き出してしまわれた。あと先生には四蔵しかありません。

これからは、よほど気をつけにならないと、いきてはおられまっせん。』
艾子は自分が吐き出した一蔵をつくずく眺め、
『かまわん。三蔵法師でさえ生きていたんだ。おれには、まだ四っもあるじゃないか』

 9・夜泣き
子供の夜泣きに困った親、医者を呼んだ。医者は投薬を終わり、そのまま泊まりました。夜半ごろ、助手に、子供の様子を見に行かせました。助手は戻って医者に。
『子供は泣いておりませなんだが、その母親が泣いておりました』

 10・節哀酒
蘇州では死者を火葬するとき、親戚友人が酒を持って来て喪主を慰める習慣があって、これを節哀という。
ある息子、父親の死んだとき、節哀酒を飲んで、へべれけになって家に帰って来たが、母親の顔を見るとゲラゲラ笑いだした。母親が怒って、
『このバカ息子、お父さんが死んだというのに、何がうれしくて笑うのか』 と言うと、

『おっかさんの顔を見たら、もう一度飲めるなと思い就いたもんだから』

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