漢書 2故事成語考>6>韓非子
           故事成語考 ・ 6 韓非子

     ・韓非子 (1)
   ☆ 越王、怒蛙に式す        (内儲説・上)
   ☆ 韋弦の佩             (観行)
   ☆ 市に虎あり            (内儲説・上)
   ☆ 狗猛くして酒酸し        (外儲説・右上)
   ☆ 郢書燕説             (外儲説・左上)
   ☆ 和氏の壁             (和氏)
   ☆ 株を守って兔を待つ       (五蠧)
   ☆ 棄灰の刑             (内儲説・上)
   ☆ 形名参同             (主道)
   ☆ 蕭墻の患い            (用人)


越王・怒蛙に式す (内儲説・上)
ほめるだけでも、人を殺すことが出来る例え。越王勾践は呉を討とうとして、人々が勇んで死んでくれることを望んだ。或る時馬車に乗って外出した時、怒って一匹の蝦蟇が向かって来るのを見て、それに敬礼をした。従者がわけを聞いたら『蝦蟇が勇気を持っているからだ』と言った。人々はこれを聞くと蝦蟇でもこれほどだから、勇気のある人はなおさら尊敬されるだろうと思い、翌年は自分の首を王に献上したい、と言う者が十人も余りも出たと言う故事に基ずく。

韋弦の佩 (観行)  
他人の長所を学び、自分の短所を補う。西門豹と言う人は、自分のせっかちなのを直す手段として、いつも柔軟ななめし皮を携えていた。また、董安子と言う人は、自分の性質がのんびりしているのを直すため、いつも厳しい物である弓の弦を身に着けていたと言う。身に着けた物の性質を借りて、身を修める誡めとしたもの。

市に虎あり (内儲説・上)
事実でないことでも、言う人が多いと聞く者もいつか信ずる。虎は普通、山にいるもの。街中にはいないが大勢の者が「いる」、「いる」と言えば、まさかと思ってもいつか信じるようになる。あり得ない事でも大勢の人が言い出だすと事実となってしまう例え。

狗猛くして酒酸し (外儲説・右上)
国に奸臣がいると、賢者が集らず国が衰える例え。宋の人で酒を売る者がいた。酒があまり売れないで、すっぱくなってしまう。原因がわからず友人に聞くと、あなたの飼い犬が猛犬で子供が買いに来た時に噛み付くから客が来なくなり、すっぱくなるまで、売れないのだと言った。同じように立派な人が治国の策を抱いて来ても、大臣や奸臣が待ちかまえて噛みついたり、脅かしたりすると、もうやって来なくなる。

郢書燕説 (外儲説・左上) 
こじつけて、最もらしい解説をすることの例え。楚の国の公が燕の国の大臣あてに口述して手紙を書かせた、灯火が暗かったので係りの者に『挙燭』(明りを挙げよ)と命じた。すると、書記がその語を手紙の文句と間違え『挙燭』と書き込んでしまった。受け取った燕の大臣は意味を図りかねたが、挙燭⇒明を学べ⇒賢人を登用せよ。と理解し王に勧めて賢人を用いた結果、国が好く治まったと言う故事に基ずく。

和氏の壁 (和氏) 名玉の名。
戦国時代に楚の国の卞和氏(べんかし)と言う男が、山中で玉の原石を見つけ脂、に献上した。 王は早速、宝石師に鑑定させると『ただの石だ』。王は怒って卞和氏の右足の筋を切る足切りの刑に処した。脂、の没後、卞和氏は再びその玉を武王に献上した。結果は同じ、今度は左足を切られた。次の文王が位に就くと、卞和氏はその石を抱き三日三晩泣き続けた。王は不思議に思いわけを聞き、その原石を細工師に磨がかせると、果たして立派な宝石を得た。後。趙の恵文王の手に渡り、秦の昭王から十五城と交換を申し込まれた。故に『連城の壁』とも呼ばれた。

株を守って兔を待つ (五蠹)ごと。 
何時までも旧習を守り時勢の変化に適応しない例え。宋の国の農夫が畑を耕していると、一匹の兔が走り来て、切り株に頭をぶっつけ死んでしまった。それから農夫は仕事を止めて切り株ばかり見守り、兔のぶっつかるのを待っていたが兔は二度と得られないで国中の笑い者となった。(北原白秋・山田耕作の『待ちぼうけ』は同型の童話の歌)

棄灰の刑 (内儲説・上) 
刑罰が非常に厳酷なこと。殷代の法律では、灰を道路に捨てただけで手を切られるという刑罰があった。犯した罪は軽いが罰は非常に重いこと。

形名参同 (主道) 
臣下の言ったことと実行とを照らし合せて、その合否で賞罰すべきの意見。韓非子が説いた勤務評定。『そもそも志があって、それを言う人には自然に名声が立ち、また腕があって仕事をすれば自然に成績が上がるから、名声と実績とを比べて検査すれば、君主は苦労せずに臣下の真相を知ることができる。』

蕭牆の患い (用人)
一族の内輪もめ。内乱。「蕭牆」は君臣の会見所に設けた屏風。または、門内にある垣。転じて、うちわ、内部の意味。身近なところに起きる心配事を好い加減にしておいて、遠い国境に堅固なとりでを築いたりする。千丈の堤も螻蟻の穴を以って潰ゆ (喩老) 小事でも油断をするな。『千丈の堤も螻蟻の穴を以って潰ゆ。百尺の高さの家屋も煙突の透き間から漏れる煙で焼ける』    




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