| 星巌詩集 （ニ） （星巌集註・乙集・巻二） 従佐賀抵諫早舟中 趁潮快艪去双双。 潮を趁うの快艪 去って双双 疎雨澹煙青一江。 疎雨の澹煙 青一江 初日忽晴風水麗。 初日忽ち晴れて風水麗かに 雲仙山色到船窓。 雲仙の山色 船窓に到る 読江芸閣品花新咏戯題八首 （一） 満畝桑麻取次成。 満畝の桑麻 取次に成る 東君多事更多情。 東君 多事 更に多情 道傍故蒔間花草。 道傍 故に蒔く 間花草 乞與蘭陵冶客評。 蘭陵の冶客に乞與して評せしむ 読江芸閣品花新咏戯題八首 （二） 冶葉娼條遍受知。 冶葉 娼條 遍く知を受ける 春風争繞筆尖吹。 春風 争うて筆尖を繞って吹く 名花拝賜応解笑。 名花 賜を拝して応に解笑すべし 第一才人第一詩。 第一の才人 第一の詩 読江芸閣品花新咏戯題八首 （三） 悪因縁是好因縁。 悪因 縁は是れ好因縁 収拾煙花尽入篇。 煙花を収拾して尽く篇に入る 従此東方佳話遍。 此より東方 佳話遍し 文通彩筆薛涛箋。 文通が彩筆 薛涛が箋 読江芸閣品花新咏戯題八首 （四） 合歓結帯楚腰囲。 合歓の結帯 楚腰を囲る 載酒江湖事已非。 酒を江湖に載す事已に非なり 只剰一編春夢記。 只剰す一編の春夢記 灯痕眉影尚依稀。 灯痕 眉影 尚を依稀たり 読江芸閣品花新咏戯題八首 （五） 我亦当年吟比紅。 我また当年 比紅を吟ず 賞春興味略相同。 賞春の興味 略ぼ相い同じ 把君新咏再三誦。 君が新咏を把って再三誦す 夢到錦雲融蕩中。 夢は錦雲 融蕩の中に到る 竹林東廂夜坐二首 （一） 孤坐東廂下。 孤坐す東廂の下 閑吟敵素秋。 閑吟 素秋に敵す 香灰心寂寂。 香は灰となり心は寂寂たり 雨絶夜悠悠。 雨は絶えて夜は悠悠たり 僧夢酣難醒。 僧の夢 酣にして醒め難し 虫声咽不休。 虫声 咽んで休まず 無人同況味。 人の況や味を同じゅうする無し 苔壁一灯幽。 苔壁 一灯幽なり （星巌集註・乙集・巻三） 瓊浦雑咏 （一） 東風日日漲香埃。 東風 日日 香埃漲る 梅已飄残香正開。 梅已に飄残して 香正に開く 百丈遊絲春一簇。 百丈の遊絲 春一簇 瓊山山上闘鳶來。 瓊山の山上 闘鳶來る 瓊浦雑咏 （二） 晨妝纔畢出来遅。 晨妝 纔に畢わり出て来ること遅し 玉漏声疎近午時。 玉漏の声疎とし午に近き時 鸚母巧偸鴇母舌。 鸚母巧みに偸む鴇母の舌 隔簾咯咯喚娘児。 簾を隔てて咯咯 娘児を喚ぶ 瓊浦雑咏 （三） 新月高高暎夕（シ猗）。 新月高高 夕（シ猗）に暎じ 河房已到納涼時。 河房 已に到る納涼の時 千壷蠻酒瑠璃碧。 千壷の蠻酒瑠璃碧し 茉莉香中唱竹枝。 茉莉 香中 竹枝を唱う 瓊浦雑咏 （四） 水欄上下月高低。 水欄上下あり月高低あり 照見鴛鴦両両棲。 照らし見る鴛鴦の両両棲むを 一種芙蓉江岸樹。 一種 芙蓉 江岸の樹 風花如笑露花啼。 風花 笑う如く露花は啼く 瓊浦雑咏 吟骨埋香長野苔。 吟骨 香を埋める長野の苔 紅裙也自解憐才。 紅裙また自ら才を憐れむを解す 春晴幾日梅花好。 春晴幾日か梅花好し 載酒劉郎暮上來。 酒を載せて劉郎 暮上に來る 発長崎 出郭行行天既白。 郭を出でて行行 天既に白し 市楼一半暁煙封。 市楼 一半 暁煙封ず 多情誰解來相送。 多情 誰か解す來りて相い送る 蘭館斗羅崇福鐘。 蘭館の斗羅 崇福の鐘 久留馬路上書懐 山郭砧声急。 山郭 砧声急なり 征人怕早寒。 征人 早寒を怕れる 霜多湖目脱。 霜多くして湖目脱し 石出水衣乾。 石出でて水衣乾く 行路成何事。 行路 何事をか成す 流年寝已闌。 流年 寝く已に闌なり 将心再三撫。 心をもって再三撫す 幽恨甚無端。 幽恨 甚だ端無し 耶馬溪絶句九首 （一） 荒駅人家簇午煙。 荒駅の人家 午煙を簇がす 人家忽尽水潺湲。 人家忽ち尽きて水潺湲 隔渓一望先明眼。 渓を隔てて一望 先ず眼に明らかなり 玉筍瑶蔘森刺天。 玉筍 瑶蔘 森として天を刺す 耶馬溪絶句九首 （二） 漸聞活活佩環鳴。 漸く聞く活活 佩環の鳴るを 翠蓋青旗透日明。 翠蓋 青旗 日を透して明らかなり 赧愧書生寒乞面。 赧愧す書生の寒乞面 群仙抗手儼相迎。 群仙 抗手 儼として相迎える 耶馬溪絶句九首 （三） 人遭知己死亦足。 人は知己に遭えば死も亦た足る 木遇良工為異材。 木は良工に遇って異材と為る 怪個渓山帯衿色。 怪しむ個の渓山 衿色を帯びるを 曾経名士品題來。 曾つて名士の品題を経て來たる 耶馬溪絶句九首 （四） 石約峰頭山束渓。 石は峰頭を約して山は渓を束ねる 煙雲錯落樹低迷。 煙雲は錯り落ち樹は低迷する 画人要闖黄家秘。 画人 黄家の秘を闖わんと要せば 何不斎糧到鎮西。 何ぞ糧を斎して鎮西に到らざる 耶馬溪絶句九首 （五） 渓山勢逼路斗絶。 渓山 勢逼って路斗絶す 行客無縁相住還。 行客相住還するに縁なし 巌腹鑚來通一線。 巌腹鑚來って一線を通ず 居然小有洞中天。 居然たり小洞中天有り 耶馬溪絶句九首 （六） 日車紅閃暁風回。 日車紅閃いて暁風回る 樹樹晴煙次第開。 樹樹の晴煙次第に開く 青圧馬頭驚欲倒。 青は馬頭を圧して驚いて倒れんと欲す 萬峰飛舞自天來。 萬峰飛舞して天より來る 耶馬溪絶句九首 （七） 雲吐霧呑峰出没。 雲吐き霧呑んで峰出没す 故人曾説雨中奇。 故人曾て説く雨中の奇 吾行遺恨君知否。 吾が行く遺恨 君知るや否や 不見群龍隠躍時。 群龍隠躍の時を見ず 耶馬溪絶句九首 （八） 曾読黄渓諸勝記。 曾つて黄渓 諸勝の記を読む 恨無画巻併傳之。 恨むらくは画巻の併せて之を傳うる無きを 異哉吾党山陽子。 異なる哉 吾が党 山陽子 双筆能将一手持。 双筆能く将に一手をもって持すべきに 十月二十三夜従鵜島低下関舟中 萍蹤不定任浮浪。 萍蹤 定まらず 浮浪に任す 又把全家付葦航。 又 全家を把って葦航に付す 二（山+固）七湾何処所。 二（山+固）七湾 何処の所ぞ 漁灯鬼火夜茫々。 漁灯 鬼火 夜茫々たり 下関雑詩六首 （一） 雨気濛々風水冷。 雨気 濛々 風水冷やかなり 豊山終日淡無影。 豊山 終日 淡く影なし 黄頭登岸去沽醪。 黄頭 岸に登り 去って醪を沽う 赤脚撥船來売餅。 赤脚 船を撥し 來たりて餅を売る 星巌集註・乙集・巻四 春尽寄越令子信及江大声 賞梅東閣吟偏好。 賞梅 東閣 吟偏えに好し 泛雪西江飲正酣。 雪を西江に泛べ飲正に酣なり 細雨残灯生遠夢。 細雨 残灯 遠夢を生じ 今宵春尽古安南。 今宵 春尽きる古安南 題梅澹卿画 緑樹団欒繞屋除。 緑樹団欒 屋を繞って除なり 春帰無客到園盧。 春帰り客なく園盧に到る 濛々三日桐花雨。 濛々たる三日 桐花の雨 潤入琴絲慢寸余。 潤は琴絲に入り慢に寸余なり 九日次韻酬橋本元吉見贈 病逢佳節倍長嗟。 病は佳節に逢い倍々長嗟す 毎度秋風不在家。 毎に秋風にあい家にあらず 玉浦湾頭一尊酒。 玉浦湾頭一尊の酒 寄人籬落看黄花。 人に籬落の黄花を看るを寄せる 読東坡集偶題其後 岷峨仙子文章伯。 岷峨の仙子文章の伯 大筆淋漓鬼又驚。 大筆淋漓 鬼又驚く 借問晩來為孟博。 借問す晩來 孟博と為し 如何早退学淵明。 如何ぞ早退 淵明を学ぶ 春風双闕他年夢。 春風 双闕 他年の夢 夜雨孤牀萬里情。 夜雨 孤牀 萬里の情 九死南荒豈無恨。 九死 南荒 豈に恨み無からん 枉言奇絶冠平生。 枉げて言う奇絶 平生に冠たりと 星巌集・丁集五 読宋金元明清諸家集各書後 （一） 大筆林離才最奇。 大筆 林離 才最も奇なり 当家本色自相宣。 当家の本色自から相い宣ろし 千年李杜文章在。 千年 李杜 文章在り 枉巻波瀾入小詩。 枉げて波瀾を巻いて小詩に入らん （原註，蘇東坡） 読宋金元明清諸家集各書後 （二） 末唐五代事紛然。 末唐 五代 事紛然たり 試士塲亡法不傳。 試士 塲亡 法 傳えず 惟我有明高太史。 惟だ我れ明に有り 高太史 欲排両宋到開天。 両宋を排して開天に到らんと欲す （高太史：明高啓） 読宋金元明清諸家集各書後 （三） 古今誰其作長句。 古今 誰其れ長句を作す 杜陵一去杳冥冥。 杜陵 一たび去って杳か冥冥 我於北地差強意。 我 北地で差や意を強うする 後五百年見典型。 後 五百年 典型を見ん （原註：李夢陽） 目次 星巌詩集・２ Copyright(C)1999-2004 by tohou AllRightsReserved 石九鼎の漢詩舘 thhp://www.ccv.ne.jp/home/tohou/ya2.htm リンクは自由です。無断で複製・転載することを禁じます |