李清照詩詞集     下の部
  鷓鴣天
寒日蕭蕭上鎖窓      寒日蕭蕭 鎖窓に上る
梧桐応恨夜来霜      梧桐 応に夜来の霜を
酒蘭更喜団茶苦      酒蘭にして更に喜ぶ団茶の苦き
夢断偏宜瑞脳香      夢断えて偏に宜し瑞脳の香

秋已尽            秋已に尽き
日猶長            日猶を長い
仲宣懐遠更凄涼      仲宣 懐遠 更に凄涼
不如随分尊前酔      分に随い尊前の酔に如かず
莫負東籬菊蕊黄      東籬の菊蕊の黄なるに負く莫れ


  
鷓鴣天
暗淡軽黄体性柔      暗淡軽黄 体性 柔かなり
情疎跡遠只香留      情は疎に跡は遠き 只だ香は留まる
何須浅碧深紅色      何ぞ須らく浅碧 深紅色なるべし
自是花中第一流      自ら是れ花中 第一流

梅定妬            梅は定めて妬み
菊応羞            菊は応に羞じるべき
画欄開処冠中秋      画欄 開く処 中秋に冠たり
騒人可殺無情思      騒人 無情の思を殺す可きに
何事当年不見収      何事ぞ当年 見ること収めざるは


  
南歌子
天上星河転         天上 星河転じ
人間簾幕垂         人間 簾幕垂る
涼生枕簟涙痕滋      涼は枕簟に生じて涙痕滋く
起解羅衣           起きて羅衣を解き
聊問夜何其         聊か問う 夜何其

翠貼蓮蓬小         翠は貼して 蓮蓬は小さき
金鎖藕花稀         金鎖の藕花は稀なり
旧時天気旧時衣      旧時の天気 旧時の衣
只有情懐           只だ情懐有り
不似旧家時         旧家の時に似ず


  
漁家傲
天接雲濤連暁霧     天は雲濤に接り 暁霧に連なり
星河欲転千帆舞     星河 転ぜんと欲して千帆 舞う
彷彿夢魂帰帝所     彷彿たる夢魂 帝所に帰す
聞天語           天語を聞く
慇懃問我帰何処     慇懃に我に問う 何処に帰る

我報路長磋日暮     我は報ず 路長く日の暮るるを磋く
学詩謾有驚人句     詩を学び 謾りに人を驚かす句有り
九万里風鵬正挙     九万里 風鵬 正に挙らんとす
風休住           風よ住まるを休め
蓬舟吹取三山去     蓬舟は吹取し三山に去る


  
攤破浣渓沙
病起蕭蕭両鬢華     病起 蕭蕭 両鬢 華なり
臥看残月上窓紗     臥して看る残月 窓紗に上る
豆?連梢煎熟水     豆?の連梢 熟水に煎る
莫分茶           分茶する莫れ

枕上詩書閑処好     枕上の詩書 閑処に好し
門前風景雨来佳     門前の風景 雨の来るも佳なり
終日向人多?籍     終日 人に向かって?籍多し
木犀花           木犀の花


  
武陵春
風住塵香花已尽     風住み塵香ばしく花は已に尽く
日晩倦梳頭        日晩 頭を梳けずるに倦うし
物是人非事事休     物は是にして 人は非 事事 休す
欲語涙先流        語らんと欲っするば涙だ先ず流るる

聞説双渓春尚好     聞説(きくならく) 双渓 春 尚を好し
也擬泛軽舟        也た軽舟を泛べんと擬す
只恐双渓??舟       只だ恐る 双渓の??舟
戴不動           戴せて動かず
許多愁           許多の愁


  
声声慢
尋尋覓覓          尋尋 覓覓
冷冷清清          冷冷 清清
凄凄惨惨戚戚       凄凄 惨惨 戚戚
乍暖還寒時候       乍ち暖く還た寒き時候
最難将息          最も将息し難く
三杯両盞淡酒       三杯両盞の淡酒
怎敵地            怎ぞ敵地
晩来風急          晩来 風急なり
雁過也            雁 過ぎる也
正傷心            正に傷心
却是旧時相識       却って是れ旧時の相識

満地黄花堆積       地に満つ黄花の堆積
憔悴損            憔悴 損せば
如今有誰?摘       如今 誰有りて摘ままんと?す
守著窓児          窓児を守著し
独自怎生得魚       独自 怎ぞ魚を生得る
梧桐更兼細雨       梧桐 更に細雨を兼ね
到黄昏            黄昏に到る
点点滴滴          点点 滴滴
這次第            這の次第
怎一個            怎ぞ一個
愁字了得          愁字 了し得


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