蘇東坡詩集   三巻    目次 : 詩話

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   傅堯兪濟源草堂
微官共有田園興。    微官共に田園の興あり
老罷方尋隠退盧。    老い罷んで方に尋ねる隠退の盧
栽種成陰十年事。    栽種 陰を成す十年事
倉皇求買百金無。    倉皇として買はんと求めるも百金無し
先生卜築臨清濟。    先生卜築 清濟に臨み
喬木如今似画図。    喬木如今 画図に似たり
鄰里亦知偏愛竹。    鄰里も亦た偏に竹を愛するを知り
春来相與護龍雛。    春来相い與に龍雛を護る

 (哲宗の元祐元年、傅堯兪は主光庭や王巌叟と東坡を攻め誣るに誹謗を以ってせめる。之より端を開いて党禍を構築せしめる。その傅堯兪の別業を東坡が詠じたもの

   陸龍図?挽詞
挺然直節庇峨岷。    挺然たる直節 峨岷を庇う
謀道従来不計身。    道を謀りて従来 身を計らず
属絋家無十金産。    属絋のとき家に十金の産なし
過車巷哭六州民。    過車巷に哭す六州の民
塵埃輩寺三年別。    塵埃輩寺 三年の別
樽俎岐陽一夢新。    樽俎岐陽 一夢新なり
他日思賢見遺像。    他日思賢に 遺像を見れば
不論宿草更沾巾。    宿草を論ぜず更に巾を沾さん

 (熙寧3年8月、龍図閣直学士知成都府陸?が卒んだ。此の詩は其の挽詞)

    次韻子由論書
吾雖不善書。     吾れ書を善くせずと雖も
暁書莫如我。     書を暁るは我に如しくなし
苟能通其意。     苟も能く其の意に通ぜば
常謂不学可。     常に謂らく学ばずして可なりと
貌妍容有顰。     貌妍なれば顰あるべく
壁美何妨橢。     壁美なれ何ぞ橢なることを妨げん
端荘雑流麗。     端荘 流麗を雑え
剛健含婀娜。     剛健 婀娜を含む
好之毎自謗。     之を好むも毎に自ら謗る
不独子亦頗。     独子も亦 頗るのみならず
書成輒棄去。     書成なりて輒ち棄て去る
繆被傍人裹。      繆って傍人に裹まる
体勢本闊落。     体勢 本闊落
決束入細麼。     決束 細麼に入る
子詩亦見推。     子が詩も亦 推される
語重未敢荷。     語重うして未だ敢て荷はず
爾来又学射。     爾来又学射を学ぶ 
力薄愁官?。      力薄うして官? を愁う
多好竟無成。     多く好めば竟に成るなし
不精安用夥。     精しからずば安んぞ夥を用いん
何當尽屏去。     何か當に尽く屏去して
萬事付懶惰。     萬事懶惰に付すべき
吾聞古書法。     吾は聞く古の書法
守駿莫如跛。     駿を守るは跛に如くなしと
世俗筆苦驕。     世俗筆苦だ驕る
衆中強嵬?。      衆中強いて嵬?
鍾張忽已遠。     鍾張忽ち已に遠く
此語與時左。     此の語 時と左う

   (東坡が子由と書を論じた詩

   胡完夫母周夫人挽詞
柏舟高節冠郷鄰。    柏舟高節郷鄰に冠たり
絳帳清風聳縉紳。    絳帳清風 縉紳に聳える
豈似凡人但慈母。    豈に凡人の但だ 慈母に似たらんや
能令孝子作忠臣。    能く孝子をして忠臣とならしむ
当年織履随方進。    当年履を織りて方進に随う
晩節称觴見伯仁。    晩節 觴を称げて伯仁を見る
回首悲涼便陳迹。    首を回せば悲涼 便ち陳迹
凱風吹尽棘成薪。    凱風吹き尽して 棘 薪を成す

  (胡完夫の母周夫人の葬儀ニ際いて送る詞であり、夫人は嫡子でない故、題は胡完夫母としている)

   出穎口初見淮山是日至壽州
我行日夜向江海。    我行日夜 江海に向かう
楓葉蘆花秋興長。    楓葉蘆花 秋興長し
長淮忽迷天遠近。    長淮忽ち迷う天の遠近
青山久與船低昂。    青山久しく船と低昂す
壽山已見白石塔。    壽山已に見る白石塔
短棹未転黄茆岡。    短棹未だ転ぜず黄茆岡
波平風軟望不到。    波平かに風軟かなるも望み到らず
故人久立煙蒼茫。    故人久しく立つ煙の蒼茫たるに

  (東坡は曽って縦筆、此の詩を書き題して言う。予年36。赴杭倅過壽作此詩・・・・・・)

   彭祖廟
跨歴商周看盛衰。    商周に跨歴して盛衰を看る
欲将歯髪闘蛇亀。    歯髪を将て蛇亀と闘はんと欲す
空餐雲母連山尽。    空しく雲母を餐して連山尽き
不見蟠桃著子時。    蟠桃 子を著くるの時を見


   
虞姫墓
帳下佳人拭涙痕。    帳下佳人 涙痕を拭ひ
門前壮士気如雲。    門前の壮士気は雲の如く
倉黄不負君王意。    倉黄 負かず君王の意
只有虞姫與鄭君。    只だ虞姫と鄭君ちあり


   初到杭州寄子由二絶 (二絶之一)
眼看時事力難勝。     眼に看る時事 力勝え難し
貪恋君恩退未能。     君恩を貪恋して退くこと未だ能はず
遅鈍終須投劾去。     遅鈍終に須らく劾を投じて去るべし
使君何日換聾丞。     使君 何の日か聾丞を換ん

  (神宗の煕寧4年11月、杭州での作。東坡の時事を論ずるもの適切なものがあり、神宗は好しとしたが、王安石に憎まれ外に出され、杭州に通判になった)


   僕去杭五年。呉中仍歳大饑疫。
来往三呉一夢間。   三呉に来往する一夢の間
故人半作冢累然。   故人半ば作る 冢累然
独依旧社伝真法。   独り旧社に依りて真法を伝う
要與遺民度厄年。   遺民と厄年を度らんと要す
趙叟近聞還印綬。   趙叟近ごろ聞く印綬を還すと
竺翁先已反林泉。   竺翁先已反林泉
何時策上相随去。   何れの時か策上 相随うて去り
任性逍遥不学禅。   性に任せて不学の禅に逍遥せん

    己未十月十五日。獄中恭聞太皇太后不予
庭柏陰陰昼掩門。   庭柏陰陰 昼 門を掩う
鳥知有赦鬧黄昏。   鳥は赦あるを知り黄昏に鬧ぐ
漢宮自種三生福。   漢宮自から種える三生の福
楚客還招九死魂。   楚客還た招k九死の魂
縦有鋤犁及田畝。   縦え鋤犁の田畝に及ぶ有るも
已無面目見邱園。   已に面目の邱園を見ること無し
只応聖主如堯舜。   只応に聖主 堯舜の如くなるべし
猶許先生作正言。   猶を先生に許してに正言を作らしむ

  予以事繋御史台獄故作二詩  (一)
聖主如天萬物春。   聖主天の如く萬物春なり
小臣愚暗自亡身。   小臣愚暗にして自から身を亡ぼす
百年未満先償債。   百年未だ満たず先ず債を償う
十口無帰更累人。   十口 帰するに無く 更に人を累せん
是處青山可埋骨。   是の處 青山骨を埋むべし
他年夜雨独傷神。   他年夜雨 独り傷神
與君世世為兄弟。   君と世世 兄弟と為り
又結来生未了因。   又結ぶ来生 未了の因

   梅花 二首之一
春来幽谷水潺潺。       春来幽谷 水潺潺
的(石 楽)梅花草棘間。   的(石 楽)たる梅花 草棘の間
一夜東風吹石裂。       一夜東風 石を吹いて裂く
半随飛雪度関山。       半ば飛雪に随って関山を度る

   梅花 二首之二
何人把酒慰深幽。    何人か酒を把って深幽を慰する
開自無聊落更愁。    開きて自ら無聊 落ちて更に愁う
幸有青渓三百曲。    幸に青渓三百曲あり
不辞相送到黄州。    辞せず相送りて黄州に到る
  (二絶宋絶として上乗、紀暁嵐曰く;前者借喩。後者説明。二首梅花を借りて自況を叙す。)



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