蘇東坡詩集   六巻     目次 : 詩話

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   会客有美堂。周?長官與数僧同泛湖
靄靄君詩似嶺雲。    靄靄として君が詩は嶺雲に似たり
従来不許酔紅裾。    従来許るさず 紅裾に酔うを
不知野屐穿山翠。    知らず野屐の山翠を穿つを
惟見軽橈破浪紋。    惟だ見る軽橈の 浪紋を破るを
頗憶呼盧袁彦道。    頗る憶う盧を呼ぶを袁彦道
難迎罵座潅将軍。    迎え難し座を罵る潅将軍
晩風落日元無主。    晩風落日元主なし
不惜清涼與子分。    清涼を惜しまず子と分たん

  (煕寧6年5月の作。客を有美堂に会したが、周?長官は服喪中で来なかった。数僧と湖中に泛べた)

   書普慈長老壁
普慈寺後千竿竹。    普慈寺後 千竿の竹
酔里曾看碧玉椽。    酔里曾って看る碧玉の椽
倦客再游行老矣。    倦客再游すれば行くゝ老いぬ
高僧一笑故依然。    高僧一笑して故らに依然たり
久参白足知禅味。    久しく白足に参じて禅味を知り
苦厭黄公聒昼眠。    苦ろに厭う黄公の昼眠に聒しきを
惟有両株紅百葉。    惟だ両株の紅百葉あって
晩来猶得向人妍。    晩来猶を人に向かって妍なることを得る
   (煕寧7年2月の作)

   杭州牡丹開時。僕猶在常潤。
羞帰応為負花期。    帰るを羞じるは応に花期に負くが為なり
已見成陰結子時。    已に見る陰を成し子を結ぶ時
與物寡情憐我老。    與物と情寡くして我が老いたるを憐れみ
遣春無恨頼君詩。    春をして恨みなからしむるは君が詩n頼れり
玉台不見朝酣酒。    玉台見ず朝酣の酒
金縷猶歌空折枝。    金縷猶を歌う空しく枝を折る
従此年年定相見。    此より年年 定ず相見ん
欲師老圃問?遅。    老圃を師として?遅に問はんと欲す

  
春夜
春宵一刻値千金。   春宵一刻値い千金
花有静香月有陰。   花は静香に有り月に陰有り
歌管楼台声細細。   歌管 楼台 声細細
鞦韆院落夜沈沈。   鞦韆 院落 夜沈沈

   立秋日祷雨宿霊隠寺
百重堆案掣身間。    百重案に堆きも身を掣すること間なり
一葉秋声対榻眠。    一葉の秋声 榻に対し眠る
牀下雪霜侵戸月。    牀下の雪霜 戸を侵す月
枕中琴筑落階泉。    枕中の琴筑 階に落つる泉
崎嶇世味嘗応遍。    崎嶇たる世味 嘗めること応に遍かるべし
寂寞山棲老漸便。    寂寞たる山棲 老いて漸く便なり
惟有憫農心尚在。    惟だ農を憫む心 尚を在るあり
起占雲漢更茫然。    起って雲漢を占って更に茫然たり
  
(煕寧6年の作。立秋の日に降雨えを上天竺に祷り、霊感観音院祷雨文を作り霊隠寺に宿し此の詩が出来た)

   游霊隠寺戯贈開軒李居士
推倒垣?也不難。    垣?を推倒するは也た難からず
一軒復作両軒看。    一軒復た両軒と作して看る
若教従此成千里。    若し此より千里を成さしめば
功歴如今也被謾。    功歴も如今 也た謾せらる

  病中独游浄慈。謁本長老。周長官以詩見寄
臥聞禅老入南山。    臥して聞く禅老南山に入ると
浄掃清風五百間。    清風に浄掃す五百間
我與世疎宜独往。    我は世と疎なり宜しく独往すべし
君縁詩好不容攀。    君は詩の好き縁って攀づることを容さず
自知楽事年年減。    自ら知る楽事の年年減ずるを
難得高人日日間。    得難きは高人の日日間なるなり
欲問雲公覓心地。    雲公に問うて心地を覓めんと欲するは
要知何處是無還。    何處か是れ無還なるを知るを要す

   
虎?泉
亭亭石塔東峰上。   亭亭石塔 東峰の上
此老初来百神仰。   此の老初めて来って百神仰ぐ
虎移泉眼趁行脚。   虎は泉眼を移して行脚を趁い
龍作浪花供撫掌。   龍は浪花を作して撫掌に供す
至今游人盥濯罷。   今に至るも游人 盥濯罷み
臥聞空階環抉響。   臥して聞う空階環抉の響くを
故知此老如此泉。   故知る此の老 此の泉の如く
莫作人間去来想。   人間去来の想を作すなきを
  (煕寧6年7月の作。昔、性空禅師が嘗て大慈山に居たが、水が無い。神人が之に告げる。明日当有水と。この夜、二虎が地を?いて穴を作り。泉水が湧き出た因って虎?泉と名付けた、と言う)

   登玲瓏山
何年僵立両蒼龍。    何れの年か僵立す両蒼龍
痩脊盤盤尚倚空。    痩脊盤盤として尚を空に倚る
翠浪舞翻紅罷亞。    翠浪舞翻す紅罷亞
白雲穿破碧玲瓏。    白雲穿破す碧玲瓏
三休亭上工延月。    三休亭上 工みに月を延き
九折巌前巧貯風。    九折巌前 巧みに風を貯う
脚力尽時山更好。    脚力尽くる時 山更に好し
莫将有限趁無窮。    有限を将って無窮を趁うこと莫れ
  (煕寧6年8月の作)


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