蘇東坡詩集      目次 : 詩話

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   次韻参廖同前
朝来処処白氈鋪。    朝来処処 白氈鋪く
楼閣山川尽一如。    楼閣山川 尽な一如
総是爛銀併白玉。    総て是れ爛銀白玉を併す
不知奇貨有誰居。    不知らず奇貨誰有って居くを
  (紀暁爛曰く:此真張打油矣と、蘇公の集中に在って最下位に在るもの)

   和林子中待制
両翁留滞各?然。    両翁留滞し各の?然
人笑迂疎老更堅。    人は笑う迂疎 老いて更に堅しと
共把鵞児一尊酒。    共に鵞児一尊の酒を把って
相逢卵色五湖天。    相逢う卵色五湖の天
江辺遺愛啼斑白。    江辺の遺愛 斑白啼き
海上先声入管弦。    海上の先声 管弦に入る
早晩淵明賦帰去。    早晩 淵明帰去を賦し
浩歌長嘯老斜川。    浩歌長嘯斜川に老いん
  (邦人先哲者、曰く:帰ると言い、帰ると言う。蘇公の常套語、応酬の作、心にも無きことを饒舌して一編の詩と為す、蘇公も時代の人たるを免れない。)

   復画王晋卿画。四首之一。(西塞風雨)
斜風細雨到来時。    斜風細雨 到来の時
我本無家何処帰。    我本家なし何の処に帰らん
仰看雲天真?笠。    仰いで雲天を看れば真に?笠
旋収江海入蓑衣。    江海を旋収して蓑衣に入れん
  (紀暁嵐:曰く四首皆刻意翻新、而皆乏天然之妙。)

   元祐六年六月自杭州召還・・・三首之一
半熟黄粱日未斜。    半ば熟す黄粱 日未だ斜ならず
玉堂陰合手裁花。    玉堂陰合するは手裁の花
却思三十年前味。    却って思う三十年前の味
未飯鐘時已飯茶。    未だ飯鐘ならざるに時已に飯茶

  (紀暁嵐:第一の詩を評して曰く一首倶に有情致。邦人先哲:曰く、倶の字、何の事やら分らない。三首倶に情致あり。蘇公は文章波瀾を積む人。巻く人ではない。今は波瀾を巻いて小詩に入ると言う。蘇公自らを知るもの)

   題王晋卿画後
醜石半蹲山下虎。    醜石半蹲す山下の虎
長松倒臥水中龍。    長松倒臥す水中の龍
試君眼力看多少。    試みに君が眼力 看多少ぞ
数到雲峰第幾重。    数へて到る雲峰の第幾重

  (紀暁爛:曰く蘇公の詩と見て粗悪と評す、決して蘇公の真作ではない。偶ま邨学の詩。誤って此に紛れ込んだもの。)

   倦夜
倦枕厭長夜。   倦枕 長夜を厭う
小窓終未明。   小窓 終に未だ明かならず
孤村一犬吠。   孤村 一犬吠え
残月幾人行。   残月 幾人か行く
衰鬢久已白。   衰鬢 久しく已に白ろく
旅懐空自清。   旅懐 空しく自ら清し
荒園有絡緯。   荒園に絡緯あり
虚織竟何成。   虚織 竟に何をか成す
  (乾隆御批に「虚廓寂寥、妙境にいたる」 査初白曰く;通首、共に少陵の神味を得たり。)

   従筆 三首之一
寂寂東坡一病翁。    寂寂たり東坡の一病翁
白須蕭散満霜風。    白須蕭散 霜風に満つ
小児誤喜朱顔在。    小児 誤りて喜ぶ 朱顔の在るを
一笑那知是酒紅。    一笑 那ぞ知らん是れ酒紅
  (容齊随筆曰く;楽天の詩云々。即ち奪胎の妙を称する。紀ホ曰く;「老を嘆ずるの意、かくの如く之を出す、語、天下に妙」)

   澄邁益通潮閣、二首之一
余生欲老海南村。    余生 老いんと欲す海南の村
帝遣巫陽招我魂。    帝は巫陽をして我が魂を招かしむ
杳杳天低鶻没処。    杳杳 天低れて 鶻 没する処
青山一髪是中原。    青山一髪 是れ中原

   澄邁益通潮閣、二首之二
倦客愁聞帰路遥。    倦客愁い聞く帰路の遥なるを
眼明飛閣俯長橋。    眼は明かに飛閣 長橋に俯す
貪看白鷺横秋浦。    貪ぼり看る白鷺の秋浦に横うを
不覺青林没晩潮。    覺えず青林の晩潮に没するを
  (乾隆御批に言う;「羇望深情、含蘊、際なし」紀ホ曰く;「神来の筆」。東坡の絶句中、有数の佳作である)

   書韓幹二馬
赤髯碧眼老鮮卑。      赤髯碧眼 老鮮卑
回策如?独善騎。      策を回すこと?るが如く 独り善く騎す
赭白紫(馬 留)倶絶世。  赭白紫(馬 留) 倶に絶世
馬中湛岳有妍姿。      馬中の湛岳 妍姿あり

   夢中絶句
楸樹高花欲挿天。   楸樹の高花 天に挿まんと欲す
暖風遅日共茫然。   暖風遅日 共に茫然
落英満地君方見。   落英満地 君方に見る
惆悵春光又一年。   惆悵春光 又一年

   答径山琳長老
與君皆丙子。    君と皆丙子
各已三萬日。    各々すでに三萬日
一日一千偈。    一日一千偈
電往那容詰。    電往 那ぞ詰るべけんや
大患縁有身。    大患は身あるに縁る
無身則無疾。    身なければ疾なし
平生笑羅什。    平生 羅什を笑う
神咒真浪出。    神咒 真に浪りに出づ
  (東坡の疾を示す時、径山長老の維琳と言う僧は之を問うて一偈を示した。そこで東坡は、その韻を用いて
此の詩を作った,後二日、終に長逝した。蘇東坡、時に六十六歳。)





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